大切なものには気付きにくい

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私たちの会社は社員旅行がある。

その季節が今年もやってきた。

このご時世なのに今時珍しいよね？

全員で同じ場所に行くってなると結構な大所帯だから

部署ごとに行き先が違う。

私たちの部署は海と温泉。

近場なんだけどバスを貸し切ってみんなで移動。

バスの中もみんなワイワイ楽しそうで一見すると学生のようなノリだ。

もともと私はそんなに騒ぐタイプでもないし

流れる景色を見つめながらボーっとしてた。


「A？気分悪い？」


「ううん。大丈夫だよ。」


「はい、これ俺のオススメの飴。」


「ありがと、北斗。」


そう、バスの座席は北斗と隣。

くじ引きで決めたのに、たまたま。

本当にたまたま隣になったんだ。

北斗も騒がしいタイプじゃないからのんびり過ごせるし良かった。

それに・・・気になってる人の隣は無条件で嬉しい。


「ね、北斗は今日泳ぐ？」


「そりゃ海に行くんだから泳ぐでしょ。」


「だよね〜・・・。」


「え、A泳がないの？」


「ん〜・・・どうしよう。」


だって、水着姿なんて人前で晒せない。

うちの部署、綺麗な子ばっかりなんだもん。


「・・・Aが泳がないなら俺も泳がない。」


「え、ごめんごめん。そういうつもりで言ったんじゃないから。」


「でも１人でいるのつまんないじゃん。」


「誰か１人ぐらいは泳がない人いるでしょ。」


「・・・やっぱ俺も泳がない。」


せっかくの旅行なのに北斗の楽しみは奪えない。


「やっぱり私も泳ぐ！だから北斗も泳ごう？」


上からパーカーでも羽織ってたらマシだよね。

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