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鈍感ヒーロー【國神錬介】 ページ35

尊敬と嫉妬は紙一重、ってどこかで聞いたことがある。

彼のことは慕っているけど、どうしようもなく嫉ましい。
恵まれた体格、運動神経、センス。
私がそれらを手に入れるのに、どれほどの時間と労力が掛かるかも知らないで。


もうとっくに日が暮れてボールが見えにくいサッカー場。散らかるボール。

「おい、そろそろ切り上げるぞ」

肩で息する私に、國神は話しかける。
私はそれが聞こえないフリをして黙々とボールを蹴り続ける。

「おい!」

近くに来た彼に肩を掴まれて、一瞬、彼と目が合う。ボールは私の脚を離れコロコロと転がっていく。


「どっか具合わりぃのか?」

「元気だよ」

顔を逸らしながら言うと、痺れを切らしたように問い詰めてくる。

「んじゃなんでそんな不機嫌なんだよ。言わなきゃ分かんねぇだろ」

「‥‥っ!」

言ってもわかんないよ。
こんな劣等感、知らないでしょ。

こんな醜い感情を持っている自分も嫌だ。
彼と一緒にいたら、自分の嫌なことばかり気付かされる。

いっそ、彼が才能を鼻にかけたすごく嫌なやつだったらいいのに。だったら嫌いになれたのに。


掴まれた肩を振り払う。

彼に苛立ちは見えず、小さい子供をあやすような態度。余計に腹が立つ。

「‥ごめん。ちょっと寝不足なだけ」

歪んだ表情を見られないように両手で顔を覆った。

彼は私の頭に、ぽんっと手を置いて言う。

「あんま無理すんなよ」

無理でもしないと、國神には追い付けないのに。

すごく惨めになって、涙が出てきた。

彼は私の頭を撫で続ける。


嫌いだ。
優しさが私を傷つけてるって気づかない、この鈍感さが、大好きで、大嫌いだ。

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雨海(プロフ) - ひよさん» 読んでくれてありがとうございます!!気に入っていただけて嬉しい(〃ω〃)最近更新サボり気味だったのですが頑張れそうです(*´꒳`*) (2023年2月20日 13時) (レス) @page23 id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。タイトルにホイホイされまして読ませて頂きましたら……私の……私の理想の夢世界が広がっておりましたありがとうございます(泣) お話のトーンもめちゃくちゃ好みです!またの更新を楽しみにお待ちしております…! (2023年2月20日 9時) (レス) @page45 id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - jやよさん» ありがとうございます!尊いなんてそんな…(〃ω〃)氷織くんいいですよね!綺麗かわいいし、関西弁がたまらん(*´-`) (2023年2月3日 0時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
jやよ - ぜ、全部尊いだと、、、主さんは神か? 特に氷織君が好きなのこういう短編集にあることも感激です!これからも主さんの好きなペースでいいので更新頑張ってください! (2023年2月2日 22時) (レス) id: 7c8c23da7c (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - ななノさん» ありがとうございます(*´꒳`*)そんなに褒めていただいて光栄です!夢主のあざと可愛いを意識してるので伝わってて嬉しいです笑モチベがめちゃ上がりました笑 (2023年1月29日 3時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨海 | 作成日時:2023年1月10日 18時

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