蜂と花束【蜂楽廻】 ページ32
「A、誕生日おめでとー♪これあげる」
彼は満面の笑みで、片手で抱えるのがやっとくらいの花束を手渡した。
彼が私の誕生日を知っていたことにも驚いたが、それ以上にこのロマンティックなプレゼントのセンスに驚いた。
私はそれを受け取ったものの、名前も知らない花たちを見てから眉を下げた。
「花束とか、もらっても困る」
彼は不思議そうに首を傾げる。
「なんで?女の子はこういうの好きでしょ?」
イキイキと開く花の陰に隠れるように萎れた花びら。それを右手で一枚ちぎると、左手で花束を彼の胸に突き返した。
「綺麗なだけだもん。枯れたら価値ないよ」
私みたい、と言いかけて、あまりにも自虐的でやめた。
「気持ちだけ受け取っとく。ありがと」
ふーん、と彼は突き返された花束に視線を移してから、歯を見せて笑った。
「俺は好きだよ。Aみたいで」
考えていることが読まれたかと思った。
えっ、と声を漏らしてしまう。
彼は花束をくしゃっ、と握り潰したかと思えば、
「っ、なにして」
乱暴に花をむしり取り、ばら撒いた。
ヒラヒラと舞う黄色、ピンク、オレンジ。
私は彼の意図が分からなくて、ぽかんとそれを眺める。
ふわりと軽い花弁が彼の肩に乗っている。
放心状態の私に、彼は鼻先が触れるくらいの距離まで顔を近づけた。
「枯れるのが嫌なら、綺麗なうちに終わっちゃえばいいんだよ。ほら。こうやって散るのも綺麗でしょ?」
にゃは、といつもの笑みを見せ、私の首元に手を伸ばした。
触れかけた手は首にはいかず、私の肩の花びらをひらりと摘んだ。
黄色の花びらは、彼の毛先と同じ色をしている。
まったく。彼の発想には、いつも驚かされる。
すっかり色がなくなった花束の残骸を持つ彼の手を握った。
「たしかに、それも悪くないね」
綺麗なまま散るのもいいけれど、それ以上に、彼の手で終わるならそれは一興だ。
ーーーーー
※めちゃめちゃ余談。
作者今日誕生日。←←
蜂楽に祝われたいぃぃぃ!と思って作った話。花束とか貰いたいよぉ( ;∀;)
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雨海(プロフ) - ひよさん» 読んでくれてありがとうございます!!気に入っていただけて嬉しい(〃ω〃)最近更新サボり気味だったのですが頑張れそうです(*´꒳`*) (2023年2月20日 13時) (レス) @page23 id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。タイトルにホイホイされまして読ませて頂きましたら……私の……私の理想の夢世界が広がっておりましたありがとうございます(泣) お話のトーンもめちゃくちゃ好みです!またの更新を楽しみにお待ちしております…! (2023年2月20日 9時) (レス) @page45 id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - jやよさん» ありがとうございます!尊いなんてそんな…(〃ω〃)氷織くんいいですよね!綺麗かわいいし、関西弁がたまらん(*´-`) (2023年2月3日 0時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
jやよ - ぜ、全部尊いだと、、、主さんは神か? 特に氷織君が好きなのこういう短編集にあることも感激です!これからも主さんの好きなペースでいいので更新頑張ってください! (2023年2月2日 22時) (レス) id: 7c8c23da7c (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - ななノさん» ありがとうございます(*´꒳`*)そんなに褒めていただいて光栄です!夢主のあざと可愛いを意識してるので伝わってて嬉しいです笑モチベがめちゃ上がりました笑 (2023年1月29日 3時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨海 | 作成日時:2023年1月10日 18時