ドライヤー【黒名蘭世】 ページ29
洗面台で髪を乾かそうとして、鏡を見て目を見張る。
キャミソールから見える肩、首、胸元。そこには赤い痕がいくつも付いていた。
慌てて脱衣所を飛び出し、ドライヤーを手に持ったまま、ベッドに腰掛ける彼に詰め寄る。
「ねぇ!なんでキスマ付けてるの」
「なんとなく」
表情を変えずに答える彼。
なんとなく、でこんなくっきり付けられても困る。
私はキスマを付けるのも付けられるの嫌いだ。できれば行為の痕跡は残したくない。
はぁー、と肩を落とした。
「これから潔と会うのに。ハイネックしか着れないじゃん」
濡れたままの髪からフローリングに水滴が落ちていることに気づいて、しゃがんでそれをタオルで拭き取ると、上から彼の声が降ってくる。
「潔と会うのか?何のために?」
「勉強会。うちの学校テスト近いから」
そうか、と言ったかと思うと彼の手が私の肩に伸びた。
顔を上げると彼はギザギザの歯をのぞかせてニヤリと笑った。
「尚更付けておいてよかった」
えっ、と言う間もなく、腕を引かれてバランスを崩し、ぼすっと彼の足の間に体が入る。
「なに?」
斜め後ろを見上げると、彼の猫目と目が合う。
「貸せ。乾かしてやる」
彼は私の手からドライヤーを取って電源を入れた。温かい風とともに、彼の指が私の髪の間を通る。
「‥優しいの珍しい」
「俺はいつも優しい」
「うっそだぁ」
クスクス笑う私を彼は後ろから小突く。
彼が密かに嫉妬してること、気づいてた。
痕をつけられるのは嫌だけど、私に執着している彼は可愛いくて、愛おしい。
髪が粗方乾いたころ、私は後ろを向いて彼と向き合う。
「私は黒名と離れないからさ、痕付けるのはやめて」
約束、と差し出した小指は握らず、不服そうに私の頬に手を置く。
「善処する」
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雨海(プロフ) - ひよさん» 読んでくれてありがとうございます!!気に入っていただけて嬉しい(〃ω〃)最近更新サボり気味だったのですが頑張れそうです(*´꒳`*) (2023年2月20日 13時) (レス) @page23 id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。タイトルにホイホイされまして読ませて頂きましたら……私の……私の理想の夢世界が広がっておりましたありがとうございます(泣) お話のトーンもめちゃくちゃ好みです!またの更新を楽しみにお待ちしております…! (2023年2月20日 9時) (レス) @page45 id: 03402cf4a3 (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - jやよさん» ありがとうございます!尊いなんてそんな…(〃ω〃)氷織くんいいですよね!綺麗かわいいし、関西弁がたまらん(*´-`) (2023年2月3日 0時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
jやよ - ぜ、全部尊いだと、、、主さんは神か? 特に氷織君が好きなのこういう短編集にあることも感激です!これからも主さんの好きなペースでいいので更新頑張ってください! (2023年2月2日 22時) (レス) id: 7c8c23da7c (このIDを非表示/違反報告)
雨海(プロフ) - ななノさん» ありがとうございます(*´꒳`*)そんなに褒めていただいて光栄です!夢主のあざと可愛いを意識してるので伝わってて嬉しいです笑モチベがめちゃ上がりました笑 (2023年1月29日 3時) (レス) id: d5df2c0ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨海 | 作成日時:2023年1月10日 18時