曖昧であまい【ブルーロック】短編集

マッサージ【千切豹馬】 ページ13

うつ伏せで足をパタパタさせて動画を見ている千切。

画面を覗くとサッカーの試合のようだった。
スポーツ経験がなく、サッカーのルールもまともに分かっていない私は試合観戦の面白さが分からない。

しばらく彼の後ろから覗いていたが、飽きてやめた。

無防備な背中を見ていると無性に触れたくなり、彼の腰あたりに乗った。
彼は、うっ、と小さく声を漏らした後、首を捻って後ろを見る。


「マッサージしようか？」

完全な思いつき。
彼は「急にどうした」と笑い、「一回一万円ね」と言うと「ぼったくりかよ」と口を開けてさらに笑う。

グッと親指に力を入れて腰を押す。
ほんとは筋肉の硬さと、疲れが溜まった硬さの違いも分からない。


「凝ってますねーお嬢さん」

「誰がお嬢さんだっつーの」

肩にかかる綺麗な赤髪を分けて、首付近も押すと、「あーきもちー」と呟く。見ていた動画はいつのまにか閉じている。
マッサージなんてろくにしたことないけど、こんなんでいいんだと思った。



そのうち指が疲れてきて飽きたから、そのままゴロンと横に転がった。うつ伏せの彼と同じ態勢を取る。

サンキュー、と言う彼に頷く。
顔の距離が近い。わざと目を逸らさずに薄く微笑むと、彼が小さく唾を飲むのが分かった。

するりと髪に手が伸び、私の垂れている髪を耳に掛ける。


「誘ってんの？」

「どう思う？」

髪に触れていた手が首、背中、腰を伝って脚に伸びる。

ショートパンツの隙間に指先が入る。

柔らかい手つき。彼の行為は丁寧で優しい。痛くないかと確認し、目が合うとふっと微笑む。
あまりに優しいから、時折り勘違いしそうになる。



私たちがただの友達でいられなくなったのはいつからだっけ。もう覚えてない。
体の関係があっても、体だけの関係ではない。
そう思いたい。

彼との行為も、彼とするくだらない会話も、私は平等に好きなのだ。

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