幻（まぼろし） (Sho S / Satoshi O) (ページ10)

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穏やかなすれ違いページ10

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年末、仕事納めの日。

翔は、本当に、私の部屋の鍵をとりにきて。

「一緒に住みたい」なんて言葉。

私は半信半疑だったのだけど。

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正月に実家に帰省していた私が

休みが明けて戻ってきたときには

翔はすでに引越しを終えていて

帰宅した私を出迎えた。

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自分のウチなのに

翔に「おかえり」って言われたのが可笑しくて

でも、智の「おかえり」を思い出して

嬉しいような、切ないような......

複雑な気持ちがした。

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一緒の部屋に住んでいるのに

仕事が始まると

翔とはなかなか顔を合わせることがなくて。

私は朝が早いし、翔は逆に帰りが遅いから。

翔は、夕飯は毎日食べてから帰ってくるし、

むしろ、私が寝る時間になっても、

帰宅しないことがしばしばだった。

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こんなすれ違いの生活。

もし相手が智ならさ。

私たち、とっくにケンカになってたよね。

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心の中で智に話しかける。

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一緒に住んでたときは、お互い学生だったから

時間もヒマも持て余して。

でもお金は全然ないからどこも行かず、いつも家の中で

２人、ずーっと一緒にいたよね。

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A：「ね、私ね。

智に怒られるかなーって、心配だった。

翔と一緒に住むなんて言ったら。

でも、こんなにもすれ違いだったら

智も心配いらないでしょ」

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