嘘 〜翔side ページ8
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クリスマスイブは金曜日に重なって
浮かれる街の喧騒をかき分けながら
Aとの待ち合わせ場所に急ぐ。
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翔:「ごめんごめん......待った?」
A:「遅いよっ、翔!
もー、寒かったんだからっ」
今日は翔のおごりね。と憎まれ口をきくAは
両手をコートのポケットに入れたまま 身をすくめて歩く。
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オレが予約した店に到着すると
A:「えっ......お蕎麦?」
クリスマスに?と言ってAが笑う。
翔:「お前だってさ、
オレといまさらオシャレなレストランとか
行きたくねーだろ?」
オレも負けずに減らず口を叩くけど、
本音を言えばさ。
そんな典型的な『クリスマス』なんて過ごしたらさ
智くんがいた、幸せだった日々を思い出して
辛く、なるだけでしょ?
翔:「つーか、ここの蕎麦、
まじでうまいんだから」
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翔:「ほんとにオレと過ごすんでよかったの?」
A:「むしろ好都合。
あの広い部屋に一人でいてもね...。
そういう翔こそ良かったの?」
翔:「ああ。別にさ、イブに一緒にいてぇヤツなんて、いないしさ」
ははっ,と笑い飛ばしてみせるけど
用意していた「嘘」に、少し胸が痛くなる。
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自分の気持ちを偽ることなんて
とっくに慣れた、つもりなのに。
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2人で熱燗を飲んでると、
いい感じに酔っぱらってくる。
翔:「ね、A。...お前まだ、
智くんと住んでたアパートにいるの?」
軽く目を逸らしたAは
「うん」と言って頷く。
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