―番外編― 新しい明日1 ページ42
.
まだ残暑の残る、9月の日曜日。
会社の同期たちと親睦会を兼ねて
バーベキューをしようってことになって
男5人、女3人で午後から河原に出かけた。
同期が全員集まるのは
春の新人歓迎会以来、約半年ぶりで...
特に翔くんは...
同期の飲みにも、いつも全然来ないから。
.
「良かったな、今日は、翔くんも来て」
首にタオルを巻き、額に汗を浮かべて火を熾す翔くんに
私がぼんやりと見惚れていると、後ろから小さく笑う声がする。
「もっ、潤。なに言って...」
潤:「ふふっ、いまさら照れんなよ。
つーか、お前、まじわかりやすいって」
「えっ、そう...なの?」
潤の言う通りだった。
私は、翔くんに...この1年間、ずっと片思いしている。
.
初めて翔くんに出会ったのは
去年の10月の、新入社員の内定式のことだった。
黒いスーツをカチッと着こなし
両手を前に合わせて姿勢よく立つ
端正な横顔に、私は......一目惚れ、した。
.
今年の4月、同期で近くの公園に花見に行こうって話になり
私はすかさず翔くんに声をかけに行った。
翔:「あー、ごめん。オレ、パス」
少しでも翔くんに近づきたかった私が
「どうして? みんな行くよ?」と言うと
翔:「ちょっと......桜見るって...気分じゃねーんだ」
少し腫れた目を伏せて、もう一度「ごめん」と言って
口元だけ、笑ってみせた。
今思い出すと、その頃の翔くんは
少し......やつれていたように思う。
.
ラッキーアイテム
革ベルト
109人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ