バイバイ ページ32
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智の夢を見た。
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それはあまりに平和で、幸せな夢で
心のどこかで、これは夢なんだって
......わかってしまうほどで。
私は智の長い指に、自分の指を絡めて、
軽くもたれかかりながら甘える。
A:「でね、でね。
翔ったら、拗ねちゃってね......」
智は、ニコニコ笑いながら、黙って私の話を聞いている。
A:「ふふふ。
ほんっと、翔ってば、可笑しいでしょ?」
私は、智が笑ってくれるから、嬉しくなって喋り続ける。
智に聞いて貰いたい話なら.......いっぱいある。
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これが本当に夢で......智といる事を願うせいで
たとえば、現実世界に戻れなくなってしまうとしても...
それでも別に構わないと思った。
それぐらい、幸せで、温かくて.........
文字通り 『夢みたい』 って..........思った。
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なのに.........それなのに..........
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智:「じゃあ...オイラ、もう行くね」
唐突に智が別れを告げる。
驚いて黙り込む私の手をぎゅっと握ると、
優しく諭すように言う。
智:「ほら、ちゃんと、バイバイして?」
私は悲しくって、子供みたいにイヤイヤをする。
智:「A、もう、大丈夫でしょ?
翔くんが、いるでしょ?」
智が、困ったような、悲しそうな顔で私に言う。
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.........翔くんをあまり悲しませないで......
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智の悲しげな声にも......
翔を悲しませていると言われたことにも
私は、ものすごく悲しくなって、泣きそうになる。
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目が覚めると目の前には、翔の端正な寝顔があって
私は翔の腕の中で体の向きを変え
何度も何度も、その唇に、自分の唇を押し付ける。
温かて、柔らかくて、
「現実」の感触のするキスを、繰り返す。
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