気づいてる 〜翔side ページ19
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眠りが浅くなっていたオレは
体を揺すられて、すぐに眼が覚めた。
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夜になって雪が降り始めたせいで
部屋の中はとても静かで
そんな中、不意に、Aの泣きそうな声が聞こえた。
A:「智の夢、見た。」
腕を掴むと体が小刻みに震えていて
寒いからじゃ、ないよね?
思わず、掴んだ腕に力を込めてAを抱き寄せる。
布団の中でAを抱きしめて
「大丈夫だよ」 背中をさすってやると
少しずつ、少しずつ、落ち着きを取り戻す呼吸。
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ねーA。
もう、そんなに苦しまないで?
悲しいことだけどさ
もう、智くんは、いないんだよ。
心ではそう思っても、それは決して口に出せなくて。
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頭の中がぐちゃぐちゃと混乱して
気づいたときにはオレは
Aに.........キスをしていた。
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Aは驚いたようだったけど
何も、言わなかった。
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抵抗されないかわりに、求められることもない 唇。
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長い沈黙を破って、Aが口を開く。
低く、消え入りそうな声。
A:「コーヒー飲んでくれてたの、翔だったんだね」
翔:「えっ......あっ、あれは、その...」
Aはオレの胸に顔をうずめて小さく笑って
A:「ふふっ。甘かったでしょ?
智みたいにお砂糖いっぱい入れて飲むの」
オレは言うべき言葉が見つからなくて
それでもわかって欲しくて、必死で話す。
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翔:「A、ごめんね?
オレ、逆にAのこと、傷つけたよね。
悪いことだって思ってたけど、だけど
『智がいるの』って言うAの幸せそうな顔
オレ、ずっと見ていたくて......」
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A:「......翔、私こそ、ごめん。
私......ほんとは......気づいてたよ」
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