夢 ページ18
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その晩。
私はまた、智の夢を見た。
しばらく夢なんて見ていなかったのに
久しぶりに見た、すごくリアルな夢。
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夢のなかで智が言う。
『A、もう、別れよう。
いつまでもオイラに囚われてちゃ、ダメだよ』
眼が覚めてもまだ、智の苦しげな表情が、消えない。
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ベッドの上に起き上がると
カーテンの隙間から激しく雪が降るのが見える。
雪にすべての物音を吸収されたような、深い静寂の中。
また不意に、あの日の記憶がよみがえる。
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今夜の雪のように
風に吹かれた桜の白い花びらが、激しく空を舞う中、
大切な人を失った、あの日の記憶が。
私はたまらなくなって部屋を飛び出す。
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A:「翔?」
翔の布団の横に座り込んで、そっと翔をゆり起こす。
翔:「どした?」
眼をこすりながら上半身を起こす翔。
A:「智の夢、見た。」
嗚咽が出そうになるのを 必死でこらえて言う。
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と、急に翔の手が伸びて腕を掴まれ
バランスを崩した私は思わず翔の方に倒れる。
翔は倒れた私を抱きしめると
そのまま自分の布団の中に包み込む。
筋肉質の腕、少し湿度の高い翔の胸の中。
背中を優しくなでられ
繰り返される「大丈夫」の言葉。
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私を抱く腕の中でそっと翔を見上げると
翔の大きな黒い瞳が私を捉える。
ゆっくりと私に近づいてくる翔を
......その切ない瞳を
私は直視することができなくて
思わず、眼を閉じた。
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不意に唇に、柔らかな、温かな感触がして
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あぁ、キス...したんだ...って思った。
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翔のキスは......微かに
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.........コーヒーの味がした。
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