検索窓
今日:13 hit、昨日:16 hit、合計:213,968 hit

ページ18

.


その晩。

私はまた、智の夢を見た。


しばらく夢なんて見ていなかったのに

久しぶりに見た、すごくリアルな夢。


.

夢のなかで智が言う。


『A、もう、別れよう。

いつまでもオイラに囚われてちゃ、ダメだよ』


眼が覚めてもまだ、智の苦しげな表情が、消えない。


.


ベッドの上に起き上がると

カーテンの隙間から激しく雪が降るのが見える。


雪にすべての物音を吸収されたような、深い静寂の中。


また不意に、あの日の記憶がよみがえる。


.


今夜の雪のように

風に吹かれた桜の白い花びらが、激しく空を舞う中、


大切な人を失った、あの日の記憶が。


私はたまらなくなって部屋を飛び出す。


.


.


A:「翔?」


翔の布団の横に座り込んで、そっと翔をゆり起こす。


翔:「どした?」

眼をこすりながら上半身を起こす翔。


A:「智の夢、見た。」


嗚咽が出そうになるのを 必死でこらえて言う。


.


と、急に翔の手が伸びて腕を掴まれ

バランスを崩した私は思わず翔の方に倒れる。


翔は倒れた私を抱きしめると

そのまま自分の布団の中に包み込む。


筋肉質の腕、少し湿度の高い翔の胸の中。


背中を優しくなでられ

繰り返される「大丈夫」の言葉。


.


私を抱く腕の中でそっと翔を見上げると

翔の大きな黒い瞳が私を捉える。


ゆっくりと私に近づいてくる翔を


......その切ない瞳を


私は直視することができなくて


思わず、眼を閉じた。


.


.


不意に唇に、柔らかな、温かな感触がして


.


あぁ、キス...したんだ...って思った。


.


翔のキスは......微かに


.


.


.........コーヒーの味がした。


.

気づいてる 〜翔side→←記憶


ラッキーアイテム

革ベルト


目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (346 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
109人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:にゃのこ | 作者ホームページ:http://.  
作成日時:2010年11月18日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。