検索窓
今日:5 hit、昨日:16 hit、合計:213,960 hit

記憶 ページ17

.


お墓参りからの帰りの車の中。


私たちは、お互い、ずっと無言だった。


私は、黙ったまま運転する翔の顔を盗み見る。

少し眉をひそめた、険しい顔。


こんな天気の中、つき合わせてしまって

翔には申し訳ないことをした、そう思って。


A:「ごめんね、翔。」


翔:「......何が?」


運転席から私を見る翔の顔はもう

いつも通りの穏やか顔で。


A:「あの......私のワガママにつき合わせて」


翔:「なんでだよ。嬉しいよ、一緒に行けて」


眉毛を下げて、笑う、この優しい笑顔が

私も、智も、大好きだった。


.


翔:「でもさ......これからも毎月行くの?」


A:「...え?」


翔:「墓参り。

ずっと、毎月、行き続けるの?」


じっと私を見つめる翔の視線から

私は思わず眼を逸らす。


A:「......忘れたくないの」


翔:「忘れると思う?」


畳みかける翔。


A:「......わかんない。

わかんないよ。 でも......


もし記憶が薄れてきてしまったら

きっと私、智を裏切ってるような気がしてしまうから」


翔:「忘れるわけねーよ。

Aも、オレも。......忘れられるワケがない。


でも、もし、だんだんね?

智くんがいない生活に慣れてしまってもさ


......智くんが......あんな優しい人がよ?

『裏切られた』 なんて、そんな風に、思うかな?」


返事することができない私に、翔はそっと呟く。


翔:「智くん、Aのこと、

本当に大事に想ってたからさ」


.


.


翔:「少し仕事するわ」


一緒に外で夕飯をすませて帰宅すると、

翔はそのまま部屋に籠ってしまった。


夜更けすぎから雨は雪に変わり

冷え込む室内に暖房をつけて、コーヒーを沸かす。


智が一緒にコーヒーを飲んでくれるようになってから

もう1週間以上、これは私の日課になってる。


A:「はい、智」


机に上にコーヒーカップを2つ並べる。


.


A:「ね、毎月、お墓参りなんて行って、

智はむしろ、迷惑してるの?」


.


.


今日の智は、返事を、してくれない。


.

夢→←雨 〜翔side


ラッキーアイテム

革ベルト


目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (346 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
109人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:にゃのこ | 作者ホームページ:http://.  
作成日時:2010年11月18日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。