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この日のお昼は購買部でパンを買うつもりだった
だけど私たちが行った時にはパンがあった形跡はなく、久しぶりに昼ごはん難民になってしまった
｢今日月曜日だった…｣
｢忘れてたね…｣
月曜日は新作のパンが出る日なので購買部には人が押寄せ、パンはあっという間になくなってしまう
夏休み明けでそんなことは、すっかり忘れていた
肩を落として教室に戻ろうとしていると、なにを買いに来たのか隣には川西先輩の姿
ラッキー…こんなとこで会えるなんて…！小さく幸せを噛み締めていると
｢川西先輩じゃん…！話しなよ…！｣
｢無理だよ…！無理！｣
｢チャンスだよ。私教室戻るね｣
｢ちょ…！｣
小声で話しているのが聞こえたのか、川西先輩は私のほうをチラッと見ると、お！って顔をした
｢どうも…｣
『何してるん』
｢パンを買うつもりだったんですけど…売り切れてて｣
『ふーん。メロンパン好き？』
｢…？好きですよ｣
『あげる』
そう言って川西先輩は手に持っていたメロンパンをくれた
食べ盛りの高校生(野球部)からパンを奪うなんて、あってはならない
｢あ！ダイエットしてるの思い出したから大丈夫です！｣
『ヒョロヒョロやん』
｢ヒョロヒョロって…｣
『あ、ごめん』
ガリガリじゃなくてヒョロヒョロってなんか釈然としない
そして最悪のタイミングで私のお腹は鳴った
『ほら腹減ってるんやん。この間のお礼やと思ってさ、もらって』
｢ありがとうございます。でも本当にいいんですか？部活のときお腹空きませんか？｣
『ええよ。今日部活休みやし』
｢じゃあ一緒に帰りませんか！｣
『あ〜ごめん』
｢ですよね…パンありがとうございます！失礼します！｣
穴があったら入りたい、とはよく言ったものだ
可能ならばブラジルまで続く深い穴の中へ入りたいと願う
なぜ、一緒に帰ろうと言ったのか自分でもわからない
勢いで言ってしまってあっさり断られた恥ずかしさとか、そういうものが重なって、私はパンのお礼を言い逃げ去った
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作者名：ニアちゃん
| 作成日時：2023年2月3日 20時
