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彼は勘違いしていた
私は今日から入るマネージャーではなく、今日から補習を受ける生徒です
「ち、違います…」
『そっか』
興味なさそうにそう言うと、彼はグラウンドに帰ろうとする
だけど、もう少し話したくて、私は反射的に彼の肩を掴んでいた
何?ってちょっと引き気味に言われたから、焦ったことを今でも覚えている
「か、肩に!砂がたくさん付いてたので!」
『え?あぁ、ありがとう』
「いえ」
『あの〜……肩腫れそうやねんけど』
「ごめんなさい!」
引き止めたはいいものの、この後なにを話そうか考えていたら、砂なんか付いてない彼の肩をバシバシと強く叩いていたようで
冗談やで、と笑う彼は左右非対称に口角が上がる印象的な人だった
『砂取ってくれてありがとうな』
「いえ」
『じゃ』
そう言ってグラウンドに戻る背中を見ていたら、もう話せない気がして、私はまた彼を呼び止めた
「あの!」
『ん?』
「これよかったら!」
ポケットに入れていた塩分補給タブレットを彼目掛けて投げた
運動音痴の私が投げたタブレットはストレートに届かず、彼は少し動いてキャッチしてくれた
「練習頑張ってください!」
『ありがと』
帰りの分はなくなったけど、そんなことはどうでもよかった
『なぁ!』
「はい!!?」
『投げるん下手くそ』
彼はまた非対称に口角を上げてそう言うと、今度こそグラウンドに戻って行った
私の瞳に映った彼は、ジリジリと地面を照りつける太陽に負けないくらい輝いていた
下手くそって言われてそれが何故か嬉しくて口元を綻ばせていると、2階の教室にいる先生から早く来いって怒られたっけ
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作者名:ニアちゃん | 作成日時:2023年2月3日 20時