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あの事件以降、名字さんは変わってしまった。

いや、無茶をする名字さんに戻ってしまったのかもしれない。

事件の傷は、ほぼ癒えたはずなのに包帯が巻かれる腕。

『じゃ、私帰ります。お疲れ様でした』

書類を書き終えた名字さんは誰よりも先に帰る。

伊吹「もう帰るのはや!」

『終わったので』

分駐所を出ていく名字さんの後ろ姿を見つめながら考える。

「自分も帰ります。お疲れ様でした」

後ろから、「お、おう!お疲れ」と陣馬さんの声が聞こえたが返す余裕がなかった。

急いで、分駐所を出ると目の前を歩く名字さんの姿が見えた。

「名字さん」

呼び止めると、1度振り返りそのまま歩き始めた。

急いで後を追う。

『何?なんか用』

「…いえ、呑みに行きませんか?」

『うーん。パス気分がのらないかな』

前は喜んで呑みに行っていたのに。

「ムーさんの所行ってますか?」

『…うん、いってるよ』

嘘だ。

あの事件以来1度も顔を出していないことは知ってる。

「嘘ですよね…ムーさん言ってましたよ」

『なに九重ムーちゃんの所行ってるんだ』

「…まぁ」

『じゃ、私が居なくなってもムーちゃんは安心か』

その言葉に立ち止まり腕を掴む。

名字さんは何を考えているのか。

この手を離したら名字さんはいなくなってしまいそうな気がした。

『何九重どうしたの?』

「…何考えてるんですか名字さん。何を!」

ニッコリ微笑む名字さん。

『なんにも考えてないよ。空っぽ…私はなんにもないただの警視総監の娘だから』

ゾクッとするこの感覚。

昔の名字さんはどこに消えてしまったのか。

「行きますよ」

『はぁ?どこに!』

「呑みにですよ呑みに!」

ワーワー叫ぶ名字さんを無視して引っ張る。

『ちょっと、いい加減にしてよ!どうしたの九重おかしいよ?』

「おかしいのは名字さんですよ?何をしようとしてるんですか?」

『だから、空っぽだって』

「言いましたよね。全部聞くって。1人で抱え込まないでください」

『…ありがとう九重でも、私は大丈夫だから』

自分の腕から離れてそのまま歩いて行ってしまった名字さんになんて声を掛けたら良かったのか。

分からないままただ、名字さんの後ろ姿を見つめることしか出来なかった。

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にる(プロフ) - めろんぱんさん» コメントありがとうございます!コメントいただけると励みになります!引き続き宜しくお願い致します! (2020年9月19日 22時) (レス) id: 6400c0deab (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - ほんっとに大好きです更新待ってますね! (2020年9月19日 19時) (レス) id: 7f8d6bcdd4 (このIDを非表示/違反報告)
にる(プロフ) - 田端さん» ありがとうございます!引き続き作品よろしくお願いします(^^) (2020年9月18日 8時) (レス) id: 6400c0deab (このIDを非表示/違反報告)
田端 - 犬猿の仲だけど心を開きつつある、そんな2人がこれからどうなっていくのか楽しみで仕方ないです。更新頑張ってください!!!!!!!応援してます!!! (2020年9月18日 7時) (レス) id: 12808757ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にる | 作成日時:2020年9月15日 12時

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