482.ぐるぐる ページ35
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(……駄目だ、)
集中できてない。みんなと練習中、ふとそう思った。目の前にある光景がぼやけていて、意識が別の場所にあるというか。頭の中ではずっとずっと同じ映像が流れていたし、ある二つの選択で頭がぐるぐるとしていた。
「……ごめん、俺ちょっと休憩行ってくるね」
この状態で練習を続けたって無意味だ。ちゃんと決めなきゃ。小さく息をついてから、ぱっと笑顔をつくって私はそう言った。
「なら俺も一緒に行くよ」
「や、トイレついでにちょっと風当たるだけだから一人で大丈夫だよ。ハンビンはまだ練習したいでしょ。気にしないで」
「わかった。時間とか気にしなくていいから、ちゃんと休んでね。ナナ今日全然休憩取ってなかったでしょ」
「……うん、ありがとう。そうするよ」
ハンビンの優しい表情と言葉。昨日のアーティストバトル自己評価での出来事を思い出しながら、ちくりと胸が痛む。きっと、私はこんなにも私のことを考えて優しくしてくれるハンビンを悲しませる、恩を仇で返すようなことを考えている。
もやもやとした黒い気持ちを誤魔化すように私は笑って。じゃあまた後でね、とハンビンや他のみんなに手を振ってから私は練習室から出て行った。
「……、……ナナ? 大丈夫?」
「ひっ! ……えっ、ソルジ先生とソクフン先生!? す、すみません……!! 全然気付かなくて……!!」
練習室から離れたソファに座って、俯きながら同じことをぐるぐると悩んでいた。しばらくそうしてたせいか、後ろから呼ばれる声に全く気づかなかったらしい。肩を捕まれ揺さぶられて初めて後ろに人がいたことに気付いたし、ぎょっとしながら振り返って更にびっくりした。
私の肩を揺さぶっていたのはソルジ先生で、そのソルジ先生後ろにはソクフン先生もいたから。ソルジ先生もソクフン先生も、二人とも心配そうな顔で私を見つめていた。
「ああ、いいのよ。こっちこそ急にごめんなさい。レッスンが終わってソクフン先生と話しながら歩いていたら、ちょうどナナが居たから……。でも話し掛けても全然反応しないし、他に人も居ないし、そもそも俯いてて雰囲気も暗いから、もしかしたら体調が悪くて休んでるのかなと思ったんだけど……」
「全っ然元気です……本当にすみません、勘違いさせてしまって……」
「体調が悪くないのなら良かったけれど……」
苦笑いをして答える私に、ソルジ先生はあまり納得していなさそうな顔を見せた。
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アップルパイ(プロフ) - なっちぃさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでいただき本当に幸いです! 更新空いてしまって申し訳ないです。なるべく更新ペース上げれるようにしたいので、これからもよろしくお願いします!🥲 (3月3日 23時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なっちぃ(プロフ) - コメント失礼します。楽しく読ませてもらってました!更新待ってます;; (3月1日 5時) (レス) id: 0ee3ec3e27 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - ビニさん» コメントありがとうございます!🥲💕 こちらこそいつも読んでくださりすごく嬉しいです。更新頑張ります!🙌 (2月7日 17時) (レス) @page17 id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
ビニ - いつも楽しく読ませて頂いております!お話の続き楽しみです、更新まってます!🥰 (2月5日 1時) (レス) @page6 id: 0e71c92fc7 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - abcdさん» いつも読んでくださりありがとうございます🥲💕 更新空いてしまう時もあるのですが、なるべく早く更新して完結させたい気持ちはあるのでこれからも頑張ります! (1月28日 15時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2024年1月25日 19時