450.体重計 ページ3
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身長が測れたので、次は体重だ。最初にフェテク兄さんが「体重は見ない」と言っていた通り、フェテク兄さんはソファで私が体重を測り終えるのを待っていた。
そんなフェテク兄さんを横目に、ぐっと覚悟を決めて体重計に両足を乗せた。最初はものすごい速さで刻まれていた数値が、徐々に速度を落としていく。
「……エッッ」
数字が止まり、表示されたその数値を薄目で確認して。つい声を上げてしまう。見間違いかも。そう思って今度はちゃんと目をしっかり開いてもう一度確認したけれど、やっぱり数値は変わらない。
「え、なに? 大丈夫?」
「だ、だいじょうぶじゃないかもしれないです……」
情けない声を上げたあと、体重計の上でお腹に触れたりわたわたしている私を不思議に思ったのか、フェテク兄さんが心配そうに聞いてきて。思わずそう答えてしまった。
「……そんな減ってた?」
「年単位で測ってないのでここ最近でどれくらい減ったのかは分からないですけど……。ちなみにフェテク兄さんって体重何kgくらいですか? 言いたくないなら全然いいんですけど……」
「え? 僕?」
首を傾げてから、「僕も最近ちゃんと測ってなかったけど、多分これくらい?」とさらっと体重を教えてくれたフェテク兄さん。その数字を頭に浮かべて、「やっぱりだいじょうぶじゃないかもです……」とまた口にした。5cmくらいフェテク兄さんより身長の高い私が、ずっとずっとフェテク兄さんより軽かった。
「……あの、見ます?」
「え? ナナはいいの?」
「別にフェテク兄さんならいいんで……」
「……じゃあ、失礼します?」
ソファから立ち上がって、こちらに来たフェテク兄さん。そうして私の体重を見て。さっきの私のように、「……エッッ」と声を上げた。
「待って待って。体重計壊れてない? 流石におかしい。僕よりずっとずっと軽いじゃん」
「で、ですよね……」
「す、すいませーん! この体重計って壊れてたりしますか!?」
「はい? 体重計ですか?」
フェテク兄さんが裏にいたスタッフさんを呼ぶと、スタッフさんは不思議そうな顔をして。それから何か思い出したようにように「あ!」と口にした。
「そうでした。すみません、出てる数字から1kg減らしてください」
「さ、更に1kg……」
「やめてください! これ以上ナナから体重を奪わないでください!!」
「え……?」
そんなめちゃくちゃなやりとりが、医務室に響いた。
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アップルパイ(プロフ) - なっちぃさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでいただき本当に幸いです! 更新空いてしまって申し訳ないです。なるべく更新ペース上げれるようにしたいので、これからもよろしくお願いします!🥲 (3月3日 23時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なっちぃ(プロフ) - コメント失礼します。楽しく読ませてもらってました!更新待ってます;; (3月1日 5時) (レス) id: 0ee3ec3e27 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - ビニさん» コメントありがとうございます!🥲💕 こちらこそいつも読んでくださりすごく嬉しいです。更新頑張ります!🙌 (2月7日 17時) (レス) @page17 id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
ビニ - いつも楽しく読ませて頂いております!お話の続き楽しみです、更新まってます!🥰 (2月5日 1時) (レス) @page6 id: 0e71c92fc7 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - abcdさん» いつも読んでくださりありがとうございます🥲💕 更新空いてしまう時もあるのですが、なるべく早く更新して完結させたい気持ちはあるのでこれからも頑張ります! (1月28日 15時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2024年1月25日 19時