467.静かな怒り ページ20
・
ミンジュン兄さんは沸点が低いというか、機嫌によってはすぐにイライラして眉をひそめて声を荒らげるけれど(逆に機嫌が良い時は何をされても楽しそうに笑っている)、それはまだマシだ。
ミンジュン兄さんの不機嫌が最高潮になって、本気で怒ったとき。ミンジュン兄さんは静かになる。喜怒哀楽が分かりやすいあの顔から表情が消えて、お前に話すことはない、話したくないと対話を拒否するのだ。
これくらい怒っているミンジュン兄さんを見たのは過去に二回だけだ。シアン兄さんがN͜͡umberの多忙さを理由に入ってきたドラマの主演を相談せず勝手に断ろうとしたときと、ヨンジュが亡くなったとき……特に自 殺した犯人の遺族が話がしたいと急に事務所に押しかけてきたときだけだった。
こっちには話すことなんかないと引き取ってもらおうにも、外には記者が沢山いるから、とりあえず事務所の中に入れるしかなくて。
優しく真面目な娘がこんな大それたことするわけがない。きっと何かの間違いだ、誰かに唆されたんだ。許してくれ。自分達も大切な娘を失った。何の地位もない、一般人の私達にはもうどうすることもできない。
事務所に入った途端、謝罪をすると思いきや、そんな事を口にした遺族。こんなことを言うためにわざわざ事務所に？ また吐き気が込み上げてくる私の横で、ミンジュン兄さんは小さく息をついた。
"……それ、ヨンジュのご両親にも言えます？ ヨンジュのご両親にとっては、ヨンジュはアイドルかどうかなんて関係なく、大切な一人息子だったんすよ。そんな人達に、あなたの息子は芸能人だから、一般人の自分達を許してくれって言えるんですか"
そう、真顔で言ったミンジュン兄さん。それから言葉に詰まる遺族に背を向けて、何も言わず作業室にこもってしまった。
あの時、ミンジュン兄さんの口調は淡々と静かだった。表情にも怒りは見えなかった。それでも、ミンジュン兄さんの握り締めていた手は確かに怒りで震えていた。
結局、あの後シアン兄さんと社長が「あまりに動揺してこんなことをしてしまったのも理解できます。起きてしまったことはどうしようもないし、家族だって理由で貴方達に罪を償ってもらうつもりはありません」、「自分達は静かにヨンジュとお別れができればそれでいいんです」、「だから今は帰ってください、これ以上誰かを恨んだりはしたくはない」と言って、他のスタッフの方に頼み遺族の方達を送り届けたんだった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2016人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイ(プロフ) - なっちぃさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでいただき本当に幸いです！ 更新空いてしまって申し訳ないです。なるべく更新ペース上げれるようにしたいので、これからもよろしくお願いします！🥲 (3月3日 23時) (
レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なっちぃ(プロフ) - コメント失礼します。楽しく読ませてもらってました！更新待ってます；； (3月1日 5時) (レス) id: 0ee3ec3e27 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - ビニさん» コメントありがとうございます！🥲💕 こちらこそいつも読んでくださりすごく嬉しいです。更新頑張ります！🙌 (2月7日 17時) (レス) @page17 id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
ビニ - いつも楽しく読ませて頂いております！お話の続き楽しみです、更新まってます！🥰 (2月5日 1時) (レス) @page6 id: 0e71c92fc7 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - abcdさん» いつも読んでくださりありがとうございます🥲💕 更新空いてしまう時もあるのですが、なるべく早く更新して完結させたい気持ちはあるのでこれからも頑張ります！ (1月28日 15時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アップルパイ | 作成日時：2024年1月25日 19時
