「君は悪くない」10

466.後ろ姿 ページ19

・



「それだけナナ兄さんがアイドルだけじゃなく作曲家としても凄かったってことですよね。さっきのミーティングだってナナ兄さん大活躍だったし。ナナ兄さんの案、全部そのまま採用されましたよね。ほんとナナ兄さんが同じチームで良かったですよ」

「はは……みんなの役に立てたなら良かったけれど。でも俺だけじゃなくて、ウンギもたくさん歌詞や編曲のアイデア出してくれたよね」

「あー、ですね。作曲家の方達がウンギはアイデアの宝庫だーって驚いてましたよね」

「ね。『Feel Special』のときのウンギの編曲とかアレンジ、すごく好きだったから今回同じチームで良かった」


 ちらりとウンギの方を見ながらそう話せば、気付いたウンギが「なになに！？ 僕のこと褒めてるー！？」と食いついてきた。それに「そうだよ。ウンギがすごいって話をしてた」と返せば、ウンギは「二人とも分かってるう〜」とそれはそれは満足そうににんまりとしながら謎の小躍りをして。
 それを眺めながら、テレと二人で「ウンギ何やってるんだろうね」と笑う。そんな平和なやり取りをしていた時。後ろの方からバタンッ！ と扉が閉まる音が響いた。

 なんだろうと振り返ってすぐ、目を見開く。同時に、寒気がした。馴染みのある後ろ姿。でも。



「……うわっ、びっくりした。……ん？ あれは……ミンジュンさん？」

「ほんとだ！ あの金髪とスタイルはぜったいミンジュンさん！ 後ろ姿もちょ〜カッコイイ〜！！！」

「ウンギうるさいよ。ミンジュンさんに聴こえたらどうするの」

「聴こえるように言ったの！ ……あれ、ナナ兄さん？ さっきから黙ってどうしたんですか？ ミンジュンさんだよ？？」


 ウンギに「大丈夫？」と肩を軽く揺さぶられ、はっとする。固まった表情を無理に動かして、すぐに笑顔を見せた。



「……ごめん、ちょっとぼーっとしてた。『Switch』の練習室だから、ミンジュン兄さんさっきまで『Switch』のレッスンしてたんだね」

「ですね。ミンジュンさん、次うちのチームに来るのいつかなあ」

「再編成までないんじゃない？ うちラップそんなないし」

「あ〜確かに。ざんね〜ん……」


(二人とも気付いてない……？)

 ウンギとテレが話しているのを横目に思う。後ろ姿しか見えなかったし、そもそも二人は知らないし見たことがないだろうから、全く気付いていないようだった。
 でも私には分かる。簡単に言うと、ミンジュン兄さんはめちゃくちゃ怒っていた。





・

467.静かな怒り→←465.作曲家

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す