「君は悪くない」10

459.顔色（イ・フェテク） ページ12

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「ごめんね、わざわざこんなことのために探させて。というかハンビン、昨日も……というかお願いした次の日から毎日来てくれてるよね？ そんな律儀に来なくてもいいのに……面倒でしょ？」

「こんなことじゃないよ。俺にとってはナナとの大事な約束だよ。全然面倒じゃないし、俺がナナと話したくて毎日来てるの」

「……ハンビンって、本当に優しいよね」


 そう、力が抜けるように笑ったA。その表情と声は単に「嬉しい」だけじゃなくて、「驚き」とか「申し訳なさ」とか「気まずさ」とか……あとはなんだろうか、とにかく色んな感情が混ざっているように見えた。
 ナナに「そんなことないよ」と首を振るハンビンも、色々な感情が混ざっているようで。どうしてハンビンが「申し訳なさ」とか「気まずさ」とか「寂しさ」とかが滲んでいるような表情をしているのだろうか。不思議だった。

 そんな二人に引っかかりを感じながらも、さっきからハンビンの言っている「約束」ってなんだろう、と思う。



(……最近A顔色が良いのは、ハンビンのおかげでちゃんと夜寝れてるから、なのかな)

 たぶん、今Aとハンビンの話していた内容や最近の二人の様子、数日前にハンビンとナナが同じベッドで一夜を共にした(この表現はかなり語弊があるけれど)事件から考えれば、大方Aがハンビンに寝る前におしゃべりがしたいと頼んだのだろう。夜、自分が寝れるように。
 ナナからそんなことを頼むのは意外だし、どんな経緯でそうなったのかはすごく気になるけれど、とにかくその約束のおかげでAが夜眠れているのなら良かった。

 思えば、ポジションバトルで色々あった後だというのに、最近のAの顔色はこの番組で再会してから一番明るく安定している気がする。本当に良いことだ。




「というか外、寒くなかった？」

「全然。俺が寒いの大丈夫なの知ってるでしょ」

「まあそうだけど……」

「あ、でも顔冷たくなっちゃったかも。ちょっとほっぺ触ってみて」

「え？ ……いや……俺の手冷たいから更に冷えるよ」

「いいからいいから」

「…………って、全然あったかいじゃん。びっくりした」

「あはは、ひっかかった」



(……あ。ハンビン、もしかして……)

 Aをただまっすぐ見つめるハンビン。熱い、でも後ろめたさも感じるその視線。それを目の当たりにして、僕はさっきのこととか、今まで感じたいくつかの違和感の理由に気づいてしまった。





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