【d!】ヘビースモーカーと嫌煙家【z/m】

11 ページ11

「折り畳み傘ってちっさいんやなぁ」

「大人二人が一緒に入ればそうなるよ」


しとしと降る雨が傘に落ちてパタパタと心地いい音を立てる。


ふと、ゾムくんの肩が濡れてることに気づいて傘の柄を持つゾムくんの手を掴んでからの方に傾ける。


「濡れてるよ」

「何言うてんねん。先輩が濡れるやろ」


私が傾けた手を軽々と戻してくるから私も戻し返す。それを何度か繰り返して私が諦める。
そんな私を見て満足そうに笑うゾムくん。くそう。


私が手を離すと彼の空いている右手に掴まれる。びっくりして足を止める。


「なぁ、これ手繋いでええやつ？」


固まった私の顔を覗き込むゾムくん。目にかかる前髪の隙間から翡翠色の瞳が覗く。


「な、なんでそうなるのよ？！」

「ちぇー」


止めてしまった足を再び動かし歩き出すとゾムくんも慌てて隣に並ぶ。
何々、急に何なの？何で急に手繋いでいいとか聞いてくる？心臓に悪いわ！！


平然を装いつつも心臓はバクバクだし頭はアワアワするしで実はものすごくパニック状態な私に対してその元凶のゾムくんは本当に平然としてる。


そんなゾムくんが急に私の腰に腕を回し自分の方に引き寄せる。密着すると彼の匂いが雨の匂いに混ざって香る。


「せめて濡れへんよーにしよーか」


私の言葉に二つ返事で承認したゾムくんはどことなく照れていたような気がしたのは気のせいだったのだろうか。

12→←10

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す