いや、マジで勘弁してください。【文スト】

手遅れ女と悲惨な現状 ページ17

......私は、現在この状況を冷静に解析している。


つい、十五秒前。私は男に押し倒されたから反抗して足で男を蹴って、男の動きを封じ込めるために跨いだ。


それはいい。正当防衛だもん、仕方ないもん。


次に、その六秒後。つまり九秒前、私は男の頭に狙撃銃入りの銀色の匣の角で殴った。


仕方ない、太宰幹部に云われたもん、気絶させろって。


そう、気絶させろと云われたのにも関わらず、私は男を力強く殴りすぎたせいで顔面を強打させ、殴られた頭からは赤黒い液体がどくどくと溢れ出しているのだ。


それが三秒前。


......そして、現在、私は返り血を浴びた状態で(多分)死んでいる男を見下ろしていた。


え、待って、待て、マジでちょっと待って......これ、死んじゃってるやつ？


待て、待て、待て、まずは整理しよう。色々と整理しよう。この十五秒間を整理しよう。



１，男に押し倒される
２，男を蹴り飛ばして跨ぐ
３，太宰幹部に「気絶させろ」と命令
４，男を何故か殺しちゃった ←これ一番やっちゃいけなかったやつ



............ポートマフィアには三つの掟がある。


一つ、首領の命令には絶対に従うこと。二つ、組織を裏切らないこと。三つ、受けた攻撃は必ずそれ以上にして返すこと。


......その内の一つ、幹部の命令も絶対。


......私は現に太宰幹部の命令を破って男を(多分)殺してしまった。


......これ、詰んだんじゃねぇの？


い、いや待て、まだチャンスはあるはずだ！落ち着け夜城A！こいつはただ頭からトマトケチャップを吹き出してぶっ倒れただけではないか！ぜ、全然問題はないし、寧ろトマトケチャップで有りがたいくらいだぞ、寧ろだぞ寧ろ！というか人間の頭からはトマトケチャップは吹き出さねぇよ！何自分で突っ込んでんだよ！馬鹿なのかよ私は！そうか、私は馬鹿なのか！？一年で資料室管理人から遊撃部隊司令官になった女が馬鹿なのか！そうなのか！だったら私より下の部下たちは全員馬鹿なのか！？何なのか！？おいどういうこった！？いやもう、自分でも判んないよ！！！



「お、おいA......？大丈夫か...？」



中原さんが私の顔を覗き込んで訊いてきた。よほど私の顔が険しい表情をしていたからなのか、中原さんは頬に汗を浮かべて私肩に触れた。



...なんだ、ただのイケメンか。



『え、えぇ...大丈夫です、ありがとうございます』


「そうか...？なんかあったら云うんだぞ」



ごめんなさい、もうなんかあった状態なんです。


そんな言葉を口には出さず、喉につっかえたまま、唾を飲んでは小さくため息をついた。

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