【派生作品】月の少女の記憶の欠片【Mostro Mask】 (ページ3)

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「お墓、作ってるのかな？」

「うん、せめて、お父様とお母様がバラバラにならないように。暖かいお家を忘れないように。あの血溜りにはお父様とお母様の血が混ざっているはずだから。」

墓石の代わりの石の手前に、懐中時計と髪飾りを置く。

三才の少女が作ったにしては相当立派なお墓がたった。

「あともうちょっと待ってちょうだいな。」

「あぁ、良いよ。」

またルナが走り出してどこかへ行く。しばらくして帰ってくると、その右手には美しい花束をと高価な万年筆を。左手には3つの袋を持って息を切らせながら歩いてきた。

「このお花はね、隠し部屋でご飯を食べるときにテーブルに飾っていたお花なの。綺麗でしょう？」

花束を墓石の周りに丁寧に植える。墓石の周りに小さな花畑ができた。
そして庭の池から水を汲んでくると、優しく花の根本にかけてやる。

一通りの作業を終わらせると、ルナが突然墓石の前にぺたんと座り込んでお辞儀をした。

「お父様、お母様、私は無事です。ちゃんとお言いつけ通り隠し部屋に隠れていました。怪我もありません。親切な方が逃げようと声をかけてくださいました。私は大丈夫です。どうか天国で……仲良く……っ、安らかっ、にっ……お眠りっ、くだっ……さいっ……。」

すすり泣き出しそうなのを必死で堪えたようで、すぐに顔を上げた。
そしてとことこハンニバルの足元までやって来ると、袋のうち二つを差し出した。

「……？」

「おかねとたべものです。大事で貴重なものですから、持ってきました。きっと役に立ちます。」

「ほぉ……わかった、有り難く頂くよ。」

両親の死を即座に理解し受けとめ、できる限りの弔いを一人で済ませて、齢3つでお金と食料の大切さを理解している。
相当賢く忍耐強い子であることが行動の隅々から滲んでいた。この子なら成長できるだろう、直感で分かった。

ルナはそのあと、花束から一本だけ抜いていた青いバラを髪に挿し、どうやら洋服や大事な物が詰まっている3つめの袋を片手にバンニガルについていった。

「さぁ、今日からここが君の家だ。家族もたくさんいるよ。」

齢3つ。彼女は田舎の孤児院の家族として迎え入れられた。
彼女の不思議な人生は、ここから始まるのだ。