一等星の彼女が、闇に隠れた訳【掃き溜めの星】

Her way only 〜彼女だけの道〜 ページ15

あの大事件の後。

「今日で……このお部屋とはお別れ、ですね。」

部屋の装飾品は全て取り、自分の洋服と家出道具一式をまとめて。

半壊状態でも、自分が３年弱の間過ごしたこの家で荷造りをするのには訳があった。

彼女は明日、……元ラビッシュヒープ副首領としての仕事を一時だけ「辞める」。

勿論、ラビッシュから完全に抜ける訳ではないし、ときどき仕事を手伝うこともある。

けれど、彼女は、麗華は。明日から最短1年だけは『月詠家のお嬢様』に戻ることにしたのだ。

半壊の国を、廃れた法と役人を、国の上層部に立って直すために。

副首領の立場からでは限度があっても、月詠麗華に戻れば幅が広がる。

そして実の父は、まだ廃れてはいなかった。彼はまだ生きている。

この一連のことを二人の首領に話し、なんとか承諾を頂いたのだった。

(……国を動かすトップ層に、一人くらいは仲間がいないと、面倒も多いでしょうし。)

そう思って麗華がふと顔をあげると、もう東の空は光りに包まれていた。

(もうそろそろ……、本当にお別れ。)

そう思って、彼女は外に出た。女神か妖精のように、音もなく、静かに。

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