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まだ少し寒い風が教室の窓を抜ける
気がつけば、もう卒業式当日だった
俺も彼女も、無事に第1志望に合格した
合格発表と同時に塾をやめた彼女との接点は、もう今の時点では同じクラスくらいしかない
それでもまだ、俺には口実があった
いつでもよかった、ただ、今日まで引き伸ばしてしまったのはやっぱり離れるのが惜しいからだと思う
結局、試験のあともココアを渡すことは出来なかったし、もともと塾の行き帰りくらいしか話さない彼女とは3月に入ってからなんて挨拶くらいしか交わせなかった
それくらいでちょうど良い気もするけど、やっぱり寂しい
卒業式も終わり、クラス全体で担任が作ってくれた思い出の動画なんかを見たりして、結局泣いた
彼女も泣いていた
それから、しばらく教室で過ごした後、いつものSHRみたいにさようならをした
彼女と話すタイミングを伺う
どうしたって、一緒に帰りたかった
単純に、マフラーのなくなった制服姿の彼女の隣を最後に歩くのは俺がよかった、それだけってことにする
「 A 」
教室の中には、俺と彼女とそれからほんの数人しかいなかった
今日一日中、このことばかりを考えていた
一緒に帰ったら何を話そうとか、どう切り出そうとか、
『 まってた 』
彼女が微笑みながら俺にそう声をかける
「 一緒に帰ろう 」
彼女は、うん、と頷くとブレザーの袖を指先までぐっと伸ばして俺の隣に来る
彼女の歩幅に合わせながらゆっくりと歩く
いつぶりだっけ、隣を歩くの
教室をでて、廊下を歩いて
彼女となんでもないような会話をする
靴を履き替えて外を出ると、暖かい日差しが俺らを照らした
それでもやっぱり、風だけは冷たかった
『 私さ、空って飛べると思うの 』
確か、前にもそんなようなことを言っていたなと思い出す
彼女のことだからきっと根拠なんかないだろうけど、一応聞き返す
「 なんで？」
『 なんとなく 』
「 だと思った 」
そう返すと彼女は、ははっ、とまるで本当に飛んじゃうんじゃないかと思うくらい弱い声で笑った
「 飛ぶ、ではないけどさ 」
『 うん？』
「 浮きそうって思うことはあるかな 」
『 浮きそう？』
「 うん 」
例えば、今とか
そう言おうとしたけど、やめた
やめたと言うより、言えなかった
ココアもろくに渡せない意気地無しが、今更言えるわけがない
いいんだ、このまま綺麗な思い出にできれば
それで、いい。
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陽(プロフ) - だださん» わあああ、ありがとうございます（ ; ; ）どのお話も綺麗なハッピーエンドに出来なくて申し訳なく思ってたのですが、お言葉とても嬉しいです（ ; ; ）ありがとうございます、！ (2019年11月23日 14時) (
レス) id: 4f815a03de (このIDを非表示/違反報告)
だだ(プロフ) - 更新心待ちにしておりました！嬉しいです(;-;)陽さんの書く切ないお話がとっっっても好きで、毎回胸を締め付けられます(;-;)全部好きなんですけど、特に飛翔のなんとも言えないむずむずが最高でした…！今回の甘味も切なくて素敵でした！これからも頑張ってください！ (2019年11月23日 10時) (レス) id: f8fe4bbe58 (このIDを非表示/違反報告)
陽(プロフ) - 霞草さん» こちらこそありがとうございます(; ;) (2019年11月1日 20時) (レス) id: 4f815a03de (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - すごく好きです。丁寧な文章と、温かい確かな記憶がとても素敵でした。感動をありがとうございました。 (2019年10月30日 22時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽 | 作成日時：2019年8月29日 0時
