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冬の体育って、どうして持久走なのだろうか。夏にやるよりマシか、なんて考えてみたりもするけれど、結局どの時期にやっても持久走と言う競技事態がやりたくないことに変わりはない。雨降んないかなあ、なんて途方もないことを考えていたら、優太が「今日体育男子自習だって」となんとも嬉しいお知らせを持ってきたので俺の体育に対する期待度がぐーんと上がった。
『 廉 』
そんな時彼女が珍しく教室で俺に話しかけてきたので、驚いて思い切り振り向いてしまった。今日は少し髪の毛を巻いているらしい。とても似合っている。それでまた、心は熱くなってどうしようもなくなるから困る。
「 どうした？珍しいやん 」
『 体育、サボろうかなって思って 』
「 なんでやねん。走れや。見とるし 」
『 やだ 』
「 は？なんでそれでまた俺も巻き添いなん？」
『 もう！黙れ！岸くん！こいつ借りる！ 』
そう言うと彼女は、俺の腕を引っ張って走った。まだ休み時間だったからか廊下に人が沢山いたような気がしたけれど正直記憶はない。目の前には彼女がいて、俺の腕を握ってトロイ足で走っていた。青いな、と思う。だってどうしようもなく、俺の青春はここにあって、彼女の青春も変わらずここにある。彼女が俺より大人になるのが早かったとしても、その青春は俺と過したこの時間なのだ。心の満たされる音は、彼女の足音なのだと思う。
急に止まったと思ったら、屋上の扉の前の階段に彼女が座りこんだ。まだ腕を掴まれていたせいで俺も同時に座った。彼女は息を切らしていた。昼休み終了の予鈴が鳴って、それから生徒の声が消える。
『 見て 』
静寂なこの空間に彼女の声がやけに響いて、指示通りにそちらを見るとあまりにも輝いている指輪の着いた右手で、彼女は鍵をブラブラと揺らしていた。
「 鍵？」
『 そう。屋上の 』
「 まさか... 盗んだん？」
『 なわけないでしょ、貰ったの先生に 』
そう言って彼女は嬉しそうに屋上の鍵を開けた。「先生チョロ〜！」と空を仰ぎながら呟く姿を、なんだか彼女っぽいなと思った。入学して初めての席で隣になった彼女と、今もこうして他の異性より少し近い距離にいられていることは至って稀で運命なのかもしれない。だから多分、俺らは結ばれないのだ。そういう決まりなのだ。
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陽(プロフ) - だださん» わあああ、ありがとうございます（ ; ; ）どのお話も綺麗なハッピーエンドに出来なくて申し訳なく思ってたのですが、お言葉とても嬉しいです（ ; ; ）ありがとうございます、！ (2019年11月23日 14時) (
レス) id: 4f815a03de (このIDを非表示/違反報告)
だだ(プロフ) - 更新心待ちにしておりました！嬉しいです(;-;)陽さんの書く切ないお話がとっっっても好きで、毎回胸を締め付けられます(;-;)全部好きなんですけど、特に飛翔のなんとも言えないむずむずが最高でした…！今回の甘味も切なくて素敵でした！これからも頑張ってください！ (2019年11月23日 10時) (レス) id: f8fe4bbe58 (このIDを非表示/違反報告)
陽(プロフ) - 霞草さん» こちらこそありがとうございます(; ;) (2019年11月1日 20時) (レス) id: 4f815a03de (このIDを非表示/違反報告)
霞草(プロフ) - すごく好きです。丁寧な文章と、温かい確かな記憶がとても素敵でした。感動をありがとうございました。 (2019年10月30日 22時) (レス) id: 402b5f83f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽 | 作成日時：2019年8月29日 0時
