あなたの隣にいたいのです【大橋和也】 (ページ25)

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あかん？ページ25

大橋side

1日のスケジュールをこなし、ホテルに戻った俺は夕食を済ませた後スマホを手に取った。

"A"の文字をタップし、呼出音を聞く。

A「はい、もしもし」

電話越しのAの声に心が踊った。

大橋「今何してるん？」

A「今ですか？晩ご飯食べてます。」

何だか賑やかしい声が聞こえる。

大橋「…どこおるん？」

A「居酒屋です」

大橋「飲んでんの？」

A「はい…どうしました？」

すぐにでも会いたかった俺の出鼻はくじかれた。

大橋「何時頃帰るん？」

A「まだ分かんないです」

大橋「…何で敬語なん？」

A「あーいや…」

言い淀むA。

"ちょっと待っててください"と誰かに伝える声が聞こえて、賑やかな声が遠のいていく。

どうやら一旦店を出たらしい。

A「今テレビ局の人といるから…」

大橋「あ、仕事の飲み会？」

A「ううん。プライベートだけど。」

その言葉に不安な気持ちが過ぎる。

大橋「…男の人？」

A「え…うん」

大橋「…迎えに行く」

A「え？」

大橋「今から向かう。場所どこ？」

A「どういうこと？」

Aが混乱するのも当たり前。

自分で終わりにしておいて、こうしてまた連絡するだなんて俺は卑怯な人間だと思う。

だけどどうしても誰かのものになってほしくなくて。

俺はアイドルで、Aはそのマネージャーで。

そんな俺らが一緒になったところで幸せになれるわけがないと決めつけていた。

世間は勿論事務所やメンバーにだって許してもらえる訳がないと思っていたから。

だから"都合の良い関係"でいようと思っていた。

Aはそれを受け入れ、俺に執着することも好意を見せることもなかった。

その時に感じた。

これは単なる俺の片思いなのだと。

だったらこんな関係だとしても繋ぎ止めていたいと思ってしまった。

大ちゃんが羨ましかった。

素直にAに対する気持ちを表現する大ちゃんはいつも眩しく見えた。

案外メンバーの反応も軽くて、もっと早くそうしておけば良かったと後悔した。

本当は自分のものにしてしまいたい。

狂おしいほどにAが好きだから。

大橋「…とにかくタクシーで向かうわ」

A「何で急に？」

大橋「…あかん？」

俺は知っている。

俺の"あかん？"をAが断れないことを。

A「…分かった」

Aに店の住所を告げられ、電話を切った。