あなたの隣にいたいのです【大橋和也】 (ページ22)

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その笑顔ページ22

病室に入ると、大橋くんは私にいつも通りの笑顔を向けた。

大橋「ごめんなあ、心配かけて」

藤原「ほんまドジにも程があるやろ」

大橋「ごめんごめん、ほんまにごめん」

上半身だけ起こした状態でベッドにいる大橋くんは風に揺れるカーテンの隙間から差し込む日の光に照らされている。

A「良かったです…大事に至らなくて」

藤原「ほんまになー。一時はどうなるかと思ったわ。」

大橋「Aも心配して駆け付けてくれたん？」

藤原「アホかお前は。当たり前やろ。俺らのマネージャーやぞ。」

本人は呑気に"あ、そっか～"なんて言って笑っている。

藤原「じゃ、俺そろそろ行くからな」

大橋「あ、丈くん夜ラジオか」

藤原「うん。安静にしとけよ。」

大橋「ありがとう」

マネージャー「じゃ、我々は行きまーす」

藤原くんは口調こそ刺々しいものの、大橋くんを本気で心配していることが伝わってくる。

やっぱり丈橋は丈橋だ。

丈くん達が病室を後にし、沈黙が訪れた。

"潮時"を迎えて以来初めて2人きりになった私達は互いに気まずい表情を浮かべる。

大橋「…何か2人で話すの久しぶりやなあ」

A「…うん」

大橋「ほんまにごめんなあ」

A「…ううん、私が悪いから」

大橋「えっ？何でAが悪いん？」

キョトン、とする大橋くん。

A「あの仕事取ったの私だから…」

今日2人がロケをしたのは難易度が高くて有名なアスレチック。

それを分かった上で出演依頼を受けた。

まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったから。

大橋「それの何が悪いん？」

A「だって…」

大橋「誰も悪くないやろ？Aは俺らの為に仕事を受けて、俺はそれを全うしようとしただけやん。」

A「…うん」

大橋「そんなん言い出したら何の仕事もできへんやろ？」

A「…そうだね」

大橋「気にせんでええよそんなん。何ともなかった訳やし。」

A「ありがとう…」

顔を上げると、大橋くんが私に向かって微笑んだ。

苦しくなる程愛おしいその笑顔は、やっぱり私が大好きな笑顔で。

大橋「…A」

A「…何？」

大橋「俺ほんまにAがなにわ男子のマネージャーになって良かったって思うわ。」

私はあくまでマネージャー。

大橋くんにとって、それ以上でもそれ以下でもない。

A「ありがとう」

複雑な感情が込み上げてきて、そう答えるだけで精一杯だった。