あなたの隣にいたいのです【大橋和也】 (ページ16)

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加速する独占欲ページ16

大橋side

スタジオの隅っこでスタッフさんと話すAが目に入った。

何だか距離が近く感じてしまうのは気の所為だろうか。

無意識に2人の方に視線がいく。

危うくソロパートでよそ見するところだった。

収録が終わり、スタッフさんへの挨拶を済ませて楽屋へ戻る。

西畑「はっすんどこ見てたん？」

藤原「ずっとよそ見しとったよな」

大橋「え…そうやった？」

長尾「心ここに在らずでしたねえ」

道枝「ずっと上の空でしたよ」

大橋「ごめん…」

2人が何を話していたのかが気になってパフォーマンスに集中できなかった自分が悔しい。

あの日の電話以来、今まで以上にAの言動を気にするようになってしまった。

Aが何を伝えたかったのかは分からないまま。

だけど、きっと何かがあったに違いない。

恭平とAという意外な組み合わせで飲んでいたことにも驚いた。

どういう経緯で2人が待ち合わせて会っていたのか、どんな会話を交わしたのか気になってしまう。

Aとはもう1ヶ月以上2人きりになっていない。

彼氏の存在、そして大ちゃんの気持ち。

それらを知ってから日に日に独占欲が加速していくのが自分でも怖くて連絡をする勇気さえ出なくなってしまっている。

Aに触れたのは車内でのあのキスが最後。

もう髪の匂いも肌の触り心地も思い出せない。

藤原「…大橋大丈夫か？」

大橋「えっ？」

藤原「顔色悪ない？」

大橋「ほんま？」

藤原「うん…Aちゃーん！」

A「はーい」

丈くんの呼び掛けでAがこちらに駆け寄ってきた。

藤原「体温計ある？」

A「ありますよ」

藤原「大橋、お前一旦熱計れ」

大橋「えー…ないと思うけどなあ…」

Aが差し出した体温計を受け取る瞬間、指先が微かに触れた。

たったそれだけで左胸がドクンと鳴った。

A「大橋くん体調悪いんですか？」

藤原「いや、顔色悪ない？こいつ」

A「あー…確かに。」

2人に見守られながら体温計を脇に挟む。

藤原「収録中も変やったしもしかしたらと思って」

A「この後はファンクラブ用の動画撮影ですけど…大丈夫ですか？」

大橋「体調悪いわけやないから大丈夫やで」

ピピピピッと音が鳴った体温計を3人で覗き込んだ。

A「えっ？」

藤原「えぐ。」

小さなディスプレイに"38.2"と表記されている。

大橋「…マジか…」