あなたの隣にいたいのです【大橋和也】 (ページ13)

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かっこ悪いページ13

あの時咄嗟についた嘘がこんな形で返ってくるとは思ってもみなかった。

A「…さっき皆知ってるって言いました？」

道枝「はい。大吾くん以外は。」

A「つまり…大西くんと大橋くん…も？」

長尾「はい！知ってますよ！」

大橋くんがこの話を耳にし、どう捉えてどう感じたかは分からない。

だけど、何事にも純粋な大橋くんのことだから藤原くんの言葉を信じてしまっていると思う。

大橋くんと関係を持っているにも関わらず彼氏がいることに対して少なからず矛盾を感じているに違いない。

A「私…もう行きます！」

高橋「えっ…」

道枝「まだ残ってますよ！」

A「お腹いっぱいなので！」

長尾「えぇ…」

慌てて鞄を持って立ち上がった私は1万円札をテーブルに置いて店を飛び出した。

ビル街を駆け抜けながらスマホを取り出し、すぐに"大橋くん"の文字をタップする。

暫くコール音が鳴った後にいつものハスキーボイスが聞こえてきた。

大橋「もしもし？」

A「あ、大橋くん！私…っ！」

私はふと我に返る。

もしかしたら大橋くんにとってはどうでも良いことかもしれない。

私に彼氏がいようがいまいが関係ないと感じているかもしれない。

だって、大橋くんは私を"都合の良い女"としてしか見てないから。

大橋「…どうしたん？」

A「あ…えっと…」

走っていた足を止め、私はスマホ片手に呆然と立ち尽くす。

大橋くんに何を伝えたくて、何の為に電話をかけたのか分からなくなってしまったから。

大橋「何でそんな息切れてんの？」

A「…運動不足…かな」

大橋「何かあったん？」

A「…ごめん。やっぱり何でもない。」

そう呟き、返事を待たずに電話を切った。

いつだって私は必死でかっこ悪い。

大橋くんにどう思われるかを気にしてばかり。

そんな自分が情けなくなって自己嫌悪に陥る。

この悪循環から抜け出せない全ての原因は大橋くんを好きになってしまったこと。

幸せになれると思ってた。

幸せに向かって生きてきたつもりだった。

若い頃描いていた28歳とは大幅にかけ離れた今の自分。

もういっそ、好きな気持ちを忘れてしまいたい。

それができたらどれだけ楽だろうか。

歩道の真ん中で目頭を熱くする私の背後に足音が迫ってきた。

「Aさん！！」