シュールな現状 ページ40
A「おじゃましまーす...」
決して広くはない、だけど1人で暮らすには十分な部屋。
軽く散らかった玄関とキッチンが"男の人の家"であることを物語っている。
そういえば誠也くんの家には1度も入ったことがない。
それどころか場所も知らない。
思い返せば職種は知っていても勤めている会社は知らない。
交友関係もあの合コンのメンバーしか知らない。
彼はあまり自分の話をしたがらなかった。
私も敢えて聞かなかった。
私は最後まで彼のことを何も知らないままだった。
A「あのー...」
気まずい沈黙を破った。
2人がけの小さなソファに腰かけた小島くんは数回瞬きを繰り返したものの、口を開く様子はない。
紺色のカーテンの隙間から街灯が覗く。
チラチラと煌めくそれに目をやってただ立ち尽くすだけの私はどうしたって情けない私のまま。
変わりたいと思っていても、人はそう簡単には変われない。
誠也くんだってこの先何も変わらないままだろう。
小島「ほんまに腹立つわ、」
大きな大きな溜め息が響いた。
小島「アホすぎるやろ」
A「え...ごめん」
5つも年下の男の子に叱られているシュールな現状がおかしくて口角が緩む。
小島「何がおもろいねん」
A「ごめん」
もう少し早く小島くんと親交を深めていればこんなことにはならなかったのかもしれない。
もっと早く目を覚ましていたのかもしれない。
小島くんはいつだって私を救い出そうとしてくれているから。
小島「いやなんかもう...お前見ると腹立つわ」
とうとう"お前"呼ばわりされてしまった。
小島「もっと他におるやろ、相手」
私には誠也くんしかいなかった。
少なくとも彼と出会ったあの時は。
それ以外の全てがモノクロに見えてしまうくらい、彼が纏う雰囲気も世界観も全てが輝いて見えた。
脳が鳴らす警告を無視して危険な道を自ら渡ってしまうくらいには魅力を感じていた。
小島「俺とか」
A「...え？」
"俺"とはつまり小島くんのことで、今小島くんが話しているのは私が恋愛をする相手のことで―
A「わ、」
強く腕を引かれてバランスを崩した。
倒れ込んだ先に感じた温もりは感じたことのないくらい優しいもので、自然と私の頬を涙が伝った。
小島「好きやねんけど」
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わさび醤油(プロフ) - そるとさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…完結まで是非よろしくお願いします。 (2022年10月1日 9時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - わさび醤油さんの小説とても好きです。綺麗な文体でどの場面も不自然なく想像しやすくて。キュンとしたり苦しかったり…今回の作品も更新楽しみにしております！ (2022年10月1日 1時) (レス) id: 09fd0b4eab (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - ゆなさん» ありがとうございます。完結までお楽しみ頂けると幸いです！ (2022年9月18日 8時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 新作楽しみにしていました。今作も最後まで応援しています。 (2022年9月17日 21時) (レス) @page18 id: 5405f5cefd (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - イルさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。これからも更新頑張りますので、最後まで読んでいただけると幸いです。 (2022年9月14日 2時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年9月5日 4時
