検索窓
今日:3 hit、昨日:9 hit、合計:32,552 hit

中途半端な人間 ページ8

脳内で鳴り響いていたはずの危険信号を感じなくなってきた。

それは安全圏に入ったのではなく、ただ単に麻痺してしまっているだけのこと。


彼は私に魔法をかける。

都合の良いものしか見せないように。


私は自らその魔力に溺れている。

同じく、都合の良いものしか見たくないから。


1度胸に抱いてしまえば取り消すことのできないその気持ちは、私の心をこれでもかと言わんばかりに締め付ける。


自分から連絡先を欲しがったのに"会いたい"とは言えない。

寂しそうにはできるのに"寂しい"とは言えない。


私は中途半端な人間―


福本「ここどうします?」

A「あー…全体のバランス見て決めよか、」

福本「分かりました」


締切直前の残業。

心身共に疲労のピーク。

時計の針が指すのは23時。

日付が回る前の帰宅は叶わない。


1つのパソコンを囲んで資料と睨めっこする私と福本くん。

思い返せば2人きりになるのは初めて。


A「…福本くんって」

福本「はい」

A「あー…ごめん、何もない」


無駄話をしている暇はない。


福本「何ですか?言ってくださいよ」

A「何もないって」

福本「気になるっすやん!」

A「しつこい」


スマホが鳴った。

期待で心音が早まる。


マウスを握る福本くんから手元のそれに視線を移す。

期待は裏切られることなく、"末澤誠也"の文字が目に入った。


今見たら駄目だ。

きっと仕事に集中できなくなってしまう。


やけに喉が渇く。

先程水筒が空っぽになったことを思い出して立ち上がった。


A「飲み物買ってくる」

福本「あ、はい!」

A「…お茶?水?」

福本「え…あ、僕ですか?」

A「他に誰もおらんやん」

福本「あ、じゃあ…お茶で」

明日は休日→←受け身状態



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
215人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

わさび醤油(プロフ) - そるとさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…完結まで是非よろしくお願いします。 (2022年10月1日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - わさび醤油さんの小説とても好きです。綺麗な文体でどの場面も不自然なく想像しやすくて。キュンとしたり苦しかったり…今回の作品も更新楽しみにしております! (2022年10月1日 1時) (レス) id: 09fd0b4eab (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - ゆなさん» ありがとうございます。完結までお楽しみ頂けると幸いです! (2022年9月18日 8時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - 新作楽しみにしていました。今作も最後まで応援しています。 (2022年9月17日 21時) (レス) @page18 id: 5405f5cefd (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - イルさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。これからも更新頑張りますので、最後まで読んでいただけると幸いです。 (2022年9月14日 2時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わさび醤油 | 作成日時:2022年9月5日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。