いっぱい食べる君が好き(N.K) ページ20
ケータリングの唐揚げを口いっぱいに詰め込んで幸せそうに微笑むAちゃん。
A「おいひい〜」
膨らんだ頬、細くなった目、下がった眉尻。
好きなものを食べているときのAちゃんは他のどんな時よりも可愛い。
A「謙杜は？お腹空いてへんの？」
真ん丸な目を更に丸くして小動物のような表情を浮かべるAちゃん。
年上とは思えないほどの幼さで溢れている。
長尾「さっきロケでめっちゃ食べたんで」
A「あ〜！そっか〜！」
痩せの大食いとはこのことか、と思い知らされるような食べっぷりに毎度驚かされる。
食べる量からは想像もできないような抜群のスタイルは見る者全てを惹き付ける。
食べ物達がこの細い体のどこに入っていくのか不思議で堪らない。
A「じゃあ謙杜の分も食べてええやんなあ？」
藤原「お前食いすぎやろ」
西畑「お腹壊すんちゃう？」
年上組の言葉に拗ねてしまったAちゃんが唇を尖らせる。
A「…うるさいなあ」
そんな姿も可愛らしくて、心臓の辺りがキュ〜っと締め付けられるように苦しくなった。
"胸きゅん"ってこういうこと？
それってつまり、俺はAちゃんのことを―
大橋「え〜！俺も食べた〜い！」
2人目の食いしん坊が楽屋に戻ってきた。
A「あかん、これ私の分やもん」
大橋「え〜…」
Aちゃんに対する"可愛い"は小動物とかぬいぐるみとか、そういうものに向ける"可愛い"と同類。
赤ちゃんとか見てる感覚に近いというか、何というか。
A「ちょっとだけやで！」
大橋「いただきま〜す」
―けど、大橋くんが美味しそうに何か食べてても胸が苦しくなることなんて絶対ないなあ。
大橋「うまっ！」
藤原「何やねんこいつら、ずっと何か食ってるやん」
多分、暫く結論が出ることはないと思う。
正体不明の苦しみと戦いながら過ごしていく。
それでも良いと思えるのは、傍にいることに慣れてしまっているからだろうか。
大橋「謙杜も食べるー？」
藤原「何で2人揃いも揃って謙杜に勧めるん？」
大西「それは俺も思った」
長尾「もしかして俺餌付けされてます？」
いつか今の関係に満足できなくなった時、胸の丈を全て伝えよう。
俺はそっと決意を固めた。
この苦しみさえも愛おしく感じる日がくるような気がして―
長尾「…やっぱり俺も1口食べさせてください！」
Fin
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年9月23日 7時
