許されざる関係(M.S) ページ14
ええ天気やなあ。
そんなことを思いながら窓の外に目をやった。
青い空を漂う白い雲が美しいコントラストを描いている。
右肩に何かが乗った。
振り返らずともそれがAちゃんの頭だと分かる。
連日のハードスケジュール。
Aちゃんに関しては映画の撮影とソロで出演するレギュラー番組の収録で大忙し。
心地よいリズムで揺れる移動車の中で眠りにつくのも日常と化している。
起こさないように優しく髪を撫でた。
手のひらに伝わる感触が胸を苦しいほどに締め付ける。
こんなにも好きなのに、俺らはグループのメンバーでしかない。
こんなにも強い思いを抱いているのに、伝えることすら叶わない。
自由に触れたい。
好きだと言いたい。
抱き締めて、俺のことだけで脳内を埋め尽くしたい。
―そんなことは許されないと知りながら欲望が溢れていく。
Aちゃんはどんな人を好きになるんやろ。
どんな人と付き合って、どんな人と結婚するんやろ。
幸せを掴む様子を傍で見守ることになるであろう"メンバー"という関係性が憎い。
もしかしたら今も彼氏おるんかな。
俺の知ってる人やったりするんかな。
こうして俺に体重を預けて無防備に寝てること、その人は知ってるんかな―
A「んー...」
夢から覚めたAちゃんが眉間にシワを寄せながら体勢を戻した。
A「んあ、ごめん、めっちゃもたれてた」
道枝「大丈夫ですよ」
大欠伸をして腕を伸ばす横顔を見つめる。
藤原「爆睡やったな」
Aちゃんの右側に座る丈くんが鞄から栄養ドリンクを取り出した。
A「買ってきてくれたん？」
藤原「ストック切れてたで」
A「ほんま？気付かんかった」
あれ？
何となく違和感を抱く。
藤原「帰りトイレットペーパー忘れんといてな」
A「あ、そうやん」
藤原「スマホにメモした方がええんちゃう？」
違和感が確信へと変わった。
きっと、
いや、絶対にこの2人は―
A「肩貸して」
藤原「まだ寝るん？」
A「着いたら起こして」
藤原「しゃあないな」
俺が許されないと思っていた関係。
それは2人にとって既に当たり前に完成されたものだった。
藤原「あ、みっちー」
道枝「...はい」
藤原「そういうことやからよろしく」
牽制のような言葉と目線に背筋が凍る。
俺が横入りするような隙は存在していない。
最初から最後まで何もできないまま、俺の恋は情けなく終わりを迎えた。
Fin
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年9月23日 7時
