抱きしめたい(M.Y) ページ47
単独の仕事を終えて東京から大阪へ。
品川駅から新大阪駅まであっという間に進む新幹線。
ここ数日を都内で過ごした俺は今日という日を心の底から楽しみにしていた。
改札を出て足早に歩く。
タクシーに乗り込んでAが住むマンションの住所を告げた。
活動の幅が広がっていくことは嬉しい。
その規模が関西に留まらないこともありがたいと思っている。
だけどAと会えない時間は俺にとって苦痛でしかない。
渋滞がもどかしい。
早く、早く着いてくれ。
そしてすぐにでも抱きしめたい―
そんなことを考えながら暫く揺られ、目的地へ到着した。
料金を支払ってキャリーケースと共にタクシーを降りる。
合鍵を使ってオートロックを開け、Aが住む部屋へ一直線。
扉を開けた瞬間広がるお揃いの芳香剤の香り。
正門「…ん？」
玄関に見慣れない靴が2足。
どちらも見るからにメンズサイズ。
正門「誰か来てる…？」
リビングから楽しげな声が聞こえてきた。
2人きりではないことが分かった途端、みるみるうちに気持ちが落ち込んでいく。
正門「…ただいま」
ドアの先で鍋を囲む3人。
家主であるA、そしてこじけんと大晴。
A「あ、おかえりー！」
小島「おー、まっさんやん」
福本「はよせんと鍋出来上がるで！」
ぐつぐつと煮込まれている具材達を見て思わず溜め息をついた。
小島「何やねんその溜め息、」
福本「幸せ逃げるで」
正門「もう逃げてるわ、既に」
厚意で2人を呼んだことは分かっている。
だけど俺はすぐにでもAを腕の中に収めたかったのだ。
洗面所で手を洗いながら再び溜め息をついた。
A「…まっさん、」
背後から声がして咄嗟に振り返る。
そこには眉尻を下げて悲しげな顔をしたAが。
正門「どした？」
A「…何か嫌なことあったん？」
正門「あー…いや、」
A「"既に幸せ逃げてる"ってどういう意味…？」
幸せやで、十分。
それは分かってんのよ、自分でも。
それでも多くを求めてしまうのは俺の勝手な我儘だ。
正門「…2人きりが良かったなあ…って」
A「ごめん…2人が来たがったから」
正門「ううん、ええよ…」
Aの体を引き寄せた。
正門「…ちょっとだけこのままでおって」
A「…うん、」
正門「充電させて、Aのこと。」
なかなか戻ってこない俺らを呼びに来た2人にその後散々イジられたのは言うまでもない。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
