ドラマの中より(N.D) ページ40
A「…大吾くん」
西畑「ん？」
A「助けてください！」
思いっ切り頭を下げるA。
西畑「え…何を？」
手に持っていた台本らしきものが差し出される。
西畑「何これ？」
受け取った表紙にはAが主演を務めるドラマのタイトルが記されていた。
A「練習付き合ってください！」
Aは演技が苦手だ。
俺が知る限り、入所当時からずっと。
だけど個人的な目で見れば別に下手ではないと思う。
寧ろ実力がなければ主演に抜擢されないはず。
西畑「ええよ」
A「ほんまですか！？流石大吾くん！大好き！」
あーあ、また安っぽい"大好き"を貰ってしまった。
これっぽっちも嬉しくないその言葉はこれで何度目だろう。
キラキラ輝く瞳で俺を見つめるAと目が合えば、そんなことはすぐにどうでもよく思えた。
台本を開いてみる。
Aが演じるのは弁当屋の一人娘で、ある日馴染み客に告白されるシーンから物語が始まる。
これ、現実に起こったら恐怖ちゃう？
"ただしイケメンに限る"ってやつ？
西畑「どこまで覚えたん？」
A「フル暗記してます！」
西畑「えっ…すごいやん」
A「やから読み合わせしてほしくて」
何となく邪心が芽生えた。
好きな子に意地悪をしたくなる男心はどうしたってなくならない。
西畑「別に俺以外でもええんちゃう？」
A「えっ？」
西畑「みっちーとか演技上手いやん、」
明らかに動揺するA。
人の気持ちを知りもしないで"大好き"なんて軽々しく言う方が悪い。
A「…でも…」
でも？
でも、何？
俺はその続きがほしいのに、いつだってAは答えを出さない。
西畑「流星でもええんちゃう？」
A「あ、いや…」
流星を呼ぼうとした瞬間、Aが俺の服の裾を摘んだ。
A「…恋愛ドラマやもん」
俯いたAの頬はほんのりピンク色に染まっている。
A「…大吾くんとしか練習したくない…です」
やっと辿り着いた答えに満足した俺はそっとAの髪を撫でた。
西畑「よく言えました」
ドラマの中より甘酸っぱい気持ちを抱えながら過ごす日々はどれだけ仕事に追い込まれたってやっぱり特別で。
こんなに愛しいAと同じ道を歩めていることが幸せで仕方がなくて。
本物の"大好き"を受け取る準備は万端だ。
だけど―
西畑「A、大好きやで」
一足先に俺の方から。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
