さようなら(O.K) ページ31
何度自分に"仕方がない"と言い聞かせても落ち込む心が晴れることはない。
どうしたって覆らない事実を直接聞かされたショックはあまりにも大きい。
A「―けどやっぱ大橋くんにはどうしても言いたくて」
照れたようにはにかんで俯くA。
伸び切った前髪の隙間から覗くアイシャドウがキラキラと眩い。
A「私にとってほんまに尊敬してる人やし」
"尊敬してる人"。
そんな肩書き、これっぽっちも嬉しくない。
A「丈くんにとっても…大事やと思うんで」
確かに俺にとって丈くんはメンバーの中でも特別な人。
それは紛れもない事実。
だけど、できることなら知りたくなかった。
A「ほんまは丈くんも呼んだんですけど」
目の前で音を上げながら焼けていくお肉に視線を移す。
大好きなはずの焼肉を見ても食欲が湧いてこない。
A「"恥ずいから1人で行け"って言われて…」
丈くんらしい言葉。
大橋「…へえ」
乾いた相槌。
それくらいしか今の俺には返せない。
Aのことが好きだった―
いや、今目の前で丈くんとの関係を話す姿を見たってやっぱりその思いは消えない。
確実にAのことが好きだ。
だけど俺が好きな人は丈くんの彼女で、俺が好きな丈くんはAの彼氏。
2人とも大切なメンバーであることに変わりはないけれど、心から喜ぶことなんてできる訳がない。
A「そろそろ焼けたんちゃいます？」
トングを手にする元気もない。
ただただ網の下で揺らめく火を見つめる。
片思いだと分かっていたはずなのに、いざこうして現実を突きつけられると心がバラバラになってしまいそうになる。
初めてAから食事に誘われて舞い上がっていた数時間前の自分を思い出して心底辛くなった。
アホやなあ、俺。
こんなに近くで日々を共に過ごしているのに、どうして気が付かなかったんだろう。
Aのことをよく見ていたつもりだったけれど、それはどうやら勘違いだったらしい。
お肉を頬張って目を輝かせるA。
この笑顔が手に入ることは二度とない。
大橋「…丈くんのどこが好きなん？」
自ら墓穴を掘った。
どうしてこんなことを聞いてしまったのかは分からない。
A「んー…大橋くんやから言いますけど」
その前置きが更に俺を傷付ける。
A「…全部、です」
さようなら、俺の片思い。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
