終わりの始まり(S.S) ページ15
着実に近付いている。
気付きたくなくても気付いてしまう。
俺も大人になったということだろうか。
だけど見て見ぬふりができるほどの余裕はない。
やはりまだまだ子供か。
A「…何？」
末澤「何が？」
A「いやずっと見てるやん」
スマホから顔を上げることなくノールックで会話をするA。
視界広すぎるやろ、とかどこに目ついとんねん、とかしょうもない台詞が頭に浮かぶ。
正門「おはようございまーす」
草間「おはよ」
他のメンバーが続々と集まってきた。
小島「大晴これ見て」
福本「えっめっちゃええやん！どこで買ったん？」
小島「今度一緒に行く？」
こんなにも大きな足音を立てて迫ってきているのに、他の皆は気が付かないのだろうか。
末澤「なあ」
A「…何？」
Aは相変わらずスマホに目を落としたまま。
俺の顔なんて見向きもしない。
末澤「…もう別れよか」
先程まであんなに騒がしかった楽屋が一気に静まり返った。
まるで時が止まってしまったかのように。
できれば気付きたくなんてなかった。
見て見ぬふりをしたかった。
葛藤の中で彷徨い続ける俺の心はいつだってAに毒されている。
全員が沈黙を貫く中、Aの爪がスマホのディスプレイに当たる音だけが響き続ける。
さっきまで陽気だった小島も大晴も皆動きを止めて息を潜めているのに、Aだけが止まらずに動き続けている。
終わりの始まり。
どこからともなく残酷なエチュードが聴こえてくる。
A「ん」
一言にも満たないその返事。
横顔から心情を読み解くことはできない。
A「そうしよ」
付き合い始めて2年。
別れたいなんて思ったことは1度もない。
だけど俺らの間にあるのは"愛"ではなく"情"。
互いにそのことを知りながらダラダラと続かせるのは違う。
好きだった。
その表現が1番正しいように思う。
Aもきっとそう。
既に俺に対する興味は消え失せている。
冷めたのではなく、覚めたのだ。
長いこと時間や思い出を共有し過ぎたせいで"手放すのが勿体ない"と感じていたのは事実。
別れるのにも体力が必要で、そのことを面倒に思ってギリギリのところでずっとせめぎ合っていた。
だけどもう、終わりを始めよう。
末澤「ま、そういうことやから皆よろしく」
こうして俺らは2年間に終止符を打った。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
