シャボン玉(N.D) ページ12
例えるならばシャボン玉。
ふわふわと風に揺られてどこか遠く、俺の手の届かないところまで飛んでいってしまいそうな気がする。
A「大ちゃ〜ん」
西畑「ん？」
雑誌撮影の合間、俺の隣に"よいしょ"と腰掛けたAが弾けるような笑顔を見せた。
A「写真撮ろ」
西畑「写真？」
珍しいその誘いに思わずオウム返しをする。
A「最近撮ってへんやん」
触れたら消えてしまいそう―
何だかそんな気がした。
こんなに近くにいるのに。
毎日のように顔を合わせるのに。
一定の所で保たれた心の距離が縮まることはない。
A「いくで〜？」
スマホの画面に映し出された自分の表情に戸惑う。
Aが目の前にいるというだけでこんなにも上手く笑えないものかと。
触れたいのに触れられない。
ずっと見ていたいのに叶わない。
いつまでも消えないで、願わくばずっと俺の傍にいてほしい。
A「はい、チーズ」
古典的な掛け声と共にシャッター音が響いた。
A「お、盛れた」
ディスプレイを覗き込んで満足気な横顔を見つめる。
ここがスタジオだということを忘れてしまいそうになった。
A「ありがと大ちゃん」
スタイリストさんが用意した衣装に身を包み、メイクさんに化粧を施されたAはいつもよりやけに大人びて見えて、まるで知らない人のようで。
A「まっさんに送ろ〜っと」
西畑「正門？」
A「うん、盛れたから」
ぼんやりと浮かび始めた可能性を俺は必死に否定する。
違う。絶対に違う。
いや、違ってくれ―
西畑「…盛れたら正門に送るん？」
自らの首を絞めてしまうのは何故だろう。
A「ん〜…？」
誤魔化すようなどっちつかずの声。
それはもうYESと言っているようなもので。
既に俺の手の届かない場所までいってしまったのだと悟る。
2人の関係に気付いたのはいつだったかもう思い出せない。
大好きな人と大好きな人。
幸せな組み合わせのはずなのに、それなのに。
スタッフ「次Aさんいきまーす」
A「はーい！」
Aが立ち上がった瞬間、仄かに香水が香った。
俺の親友と同じ香り。
なあ、正門。
そんな簡単に奪わんといてや。
俺の思いもシャボン玉のようにふわふわとどこかへ飛んでいってしまえば良いのに。
弾けて消えて、なかったことになれば良いのに。
なあ、正門もそう思うやろ？
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
