俺の出る幕(S.S) ページ1
末澤「最近飲みすぎちゃう？」
何度目か分からないその言葉。
どれだけ口をすっぱくしても当の本人には届かない。
A「分かってますって」
"しつこいなあ"とでも言わんばかりの口調。
A「大丈夫ですから」
一体何が"大丈夫"なんやろ。
スマホの画面に目を落としたAの横顔を見ながら思考を巡らせる。
俺なりにAを気遣っているつもりだけど、その全ては"ただのお節介"として受け取られてしまう。
まるで反抗期の親と娘。
Aは元々お酒を好んで飲むタイプじゃなかった。
だけどこの頃は異常な頻度で膨大な量のアルコールを摂取している。
理由は分かっている。
だけどその話題に自ら触れることはしない。
軽く浮腫んだフェイスライン。
白く細い腕にできた痣。
ついさっき飲んでいた胃薬の空箱。
そのどれもが昨晩の過度な飲酒による産物だろう。
顔を合わせる度に二日酔いでグロッキーなA。
そんなに辛いんやったら飲まんかったらええやん、なんて本人に言っても絶対に無駄であろう台詞が浮かんだ。
小島「また二日酔いなん？」
A「んー、」
気の抜けたような返事ばかり重ねるAに呆れた小島と目が合った。
小島「え、何すか」
末澤「別に何も言うてへんやん」
約1ヶ月前、Aは3年付き合った恋人と別れた。
どちらからともなく、互いに自然と気持ちが離れてしまった―
と小島から聞いた。
それ以来、Aは毎晩飲みに出るようになってしまったのだ。
俺は何の相談も受けていない。
Aにとって何でも話せるような相手ではないのだろう。
一方でAと同期の小島はプライベートで起きた些細な出来事でさえ共有している。
A「あ、」
空になったペットボトルを見て眉間にシワを寄せるA。
末澤「…買ってきたろか？」
果たしてこの提案は優しさなのか、それとも否か。
自分自身でも答えは見つけ出せない。
A「大丈夫です」
一体何が大丈夫なのか―
そう思ったのも束の間、Aが小島の手元にあったペットボトルを手に取った。
A「サンキュー」
小島「おい、許可取る前に飲むな」
A「ん、やから先お礼言ったやん」
小島「帰りラーメン奢れ」
A「高級な水やな」
"お前の出る幕はない"と言われたような気がした。
この思いはきっと永遠に一方通行。
無根拠に"大丈夫"と言われ続けるだけの恋路を辿る。
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» ありがとうございます！とても嬉しいです…これからも楽しんで読んで頂けると幸いです！ (2022年7月13日 1時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 一話完結型の短編集でこんなにもどのお話も楽しく面白いなと感じたのは初めてでした❤︎お忙しい中、たくさん更新してくださり毎回更新されるのが楽しみでした(^^)また続編も今から楽しみにしています❤︎ (2022年7月12日 23時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - kkさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて幸いです。そしてリクエストもありがとうございます！更新まで暫くお待ちください！ (2022年6月24日 12時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 小島くん、大晴くんがメインのストーリーリクエストさせて頂きたいです❤︎お忙しいとは存じますが、更新楽しみにしています(//∇//) (2022年6月24日 0時) (レス) id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - コメント失礼します。紅一点設定大好きで、わさび醤油さんが書かれるお話や設定、展開がとても素晴らしくて楽しく一気に読ませて頂きました❤︎どのお話も好きなのですが、特に小島くん、大晴くんのお話にきゅんとしました❤︎ (2022年6月24日 0時) (レス) @page16 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年6月15日 0時
