幼馴染。 ページ1
無性に腹が立つ。
鼻歌を歌いながら鏡と睨めっこする横顔。
瞼にアイシャドウを乗せる慣れた手つき。
リップを2本手に持って見比べる真剣な表情。
A「謙杜〜」
謙杜「えっ？」
突然名前を呼ばれて驚いた。
謙杜「…何？」
A「こっちの色とこっちの色…どっちがええと思う？」
謙杜「…右」
正直言って違いが全くが分からない。
俺が適当に答えたとは露知らず目を輝かせたAが微笑む。
A「やっぱこっちやんなあ？ありがと謙杜！」
ああ、駄目だ。
俺は昔からこの笑顔にめっぽう弱い。
そもそも女の人のこういう質問って大体は自分の中で答えが出ている。
ただ誰かに決定打を押してもらいたいだけ。
頭の中ではそう分かっていてもAの唇の色を俺が決めたという事実に喜びを感じてしまう。
我ながら単純すぎる思考回路。
そのリップは俺の為に選ばれた訳じゃないのに。
A「できた〜」
どうやら化粧が終わったらしい。
クローゼットを開けたAが当たり前のように服の裾に手をかけた。
謙杜「ぅおおいっ！！」
A「え？何？虫？」
謙杜「ちゃうわ！」
慌てて立ち上がった俺と怪訝そうな顔をするA。
謙杜「何当たり前に脱ごうとしとんねん！」
A「え…？やって着替えんと出かけられへんやん」
謙杜「それはそうやけど！」
俺は部屋のドアノブに手をかけた。
謙杜「…着替えるんやったら俺出てくから言うてや」
A「あ〜そういうことか！ごめんごめん」
えへへ、と笑ったAに溜め息をつきながら廊下に出た。
扉が閉まった瞬間、思わずその場に座り込む。
一瞬だけ見えたAの腹部が脳裏に焼き付いて離れない。
白い肌、程よく肉付きの良いウエスト。
鼓動が早くなっていく。
A「謙杜〜着替え終わったで〜」
部屋の中からくぐもった声が聞こえる。
直接顔を合わせられそうにない俺は立ち上がってドア越しに返事をした。
謙杜「俺もう帰るわ…」
A「あ、そうなん？気い付けや〜」
俺は階段を降りて玄関へ。
謙杜「気を付けるも何も家隣やん…」
そんな独り言を漏らしながらAの家を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Aぇ!group」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
深澤りん(プロフ) - わさび醤油さん» レスありがとうございます！最後まで読みます！楽しみにしてます！ (2022年5月23日 20時) (
レス) id: 214e1122e7 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - 深澤りんさん» コメントありがとうございます！是非最後まで読んでくださると幸いです。 (2022年5月23日 20時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
深澤りん(プロフ) - 丈くん推しです。切なそうだけど結末楽しみにしてます (2022年5月23日 19時) (レス) @page42 id: 214e1122e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年4月2日 16時
