太宰治という男 ページ7
ヒュウ、と風が吹き寒さにぶるりと体を震わせた。
水に浸かってしまったからだろう。
ーーー店で服を調達しないといけないな。
チラリと自 殺男も寒そうに身を縮めている。
自ら川に飛び込み、寒さに震えるのならそもそも自 殺などしなければ良いのに…とレフは思うがきっと彼には通用しないのだろう。
「私はひとに迷惑をかけないクリーンな自 殺を心掛けているのだが…
現に君に迷惑を掛けてしまった。それは申し訳ないと思っているよ」
『それは構わないさ、
僕はただ自分のしたいようにしただけだしね』
「…ーーふぅむ、よし!
何かお詫びをしようじゃないか!
…と、言いたい所だが…財布が流されていったようでね」
おや、これは前にあった流れだな…と男は呟く。
『前にも入水を?』
「そうとも!
その時は少年に助けられてね…
…嗚呼、そういえば申し遅れた。
お詫びをしたいのに名乗らないのは失礼だ
…私の名前は太宰。太宰治さ」
フワリ、と風が吹き彼ーーー太宰の砂色の外套が舞っていた。
『僕はレフ・トルストイ。しがない物書きだよ』
宜しく、と手を差し出し軽く握った。
◆◇◆◇
ーーー結論から言おう。
レフは太宰を頗る気に入った。
お詫びがしたいのなら服を買うのを手伝ってくれ、とついでに太宰の服も買う算段のレフはよく行く服屋へと向かった。
自 殺をしようとする人間だ。
あまり話は合わないかも知れないと思っていたレフだが太宰は話は飽きが来なくて面白いものばかりであった。
色んな話の中で特に、同僚の話や最近出来た後輩の話が面白い。
二人分の服を一式揃え、濡れた服を着替えば多少ベタつきはあるものの先よりはマシになる。
『そういえば、太宰君は一体何の仕事をしているんだい?』
「私?探偵だよ」
『へえ、自 殺志願者の探偵か…良い題材になりそうだね』
探偵の様には見えない、とは思っていても言わない方が良いだろう。
世の中言っていい事と言わなくて良い事がある。
「武装探偵社、なら聞き覚えはあるんじゃない?」
『武装探偵社!その社員の殆どが異能力者だという…太宰君も異能力者なのか?』
是、と頷く彼に世間は狭いのだな、とレフは思う。
フョードルもどんな異能かは知らないが異能力者である。
興味が無くて今まで聞いてこなかったが今度会った時に聞いてみよう。
レフは最近会えずにいる友の顔を思い浮かべ微笑んだ。
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なはて(プロフ) - ものすごい面白かったです!作者様の気が向いたらでも良いので、続きを書いてくれたら嬉しいです! (2022年4月25日 7時) (レス) @page22 id: 72c776ebcc (このIDを非表示/違反報告)
天人鳥(プロフ) - すんごい続きが気になります…。更新お願いします! (2022年3月28日 19時) (レス) id: d581acac34 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - この作品完結してしまったのでしょうか…?続きが気になります! (2021年5月1日 12時) (レス) id: 5986ae6a0e (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - わたくしさん» それなです〜ほんと色とかもつけて欲しいです。絶対上手い (2021年3月27日 23時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
わたくし - 絶対デジタルで絵描いたら上手いですよ! (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6ee51eba6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年7月16日 23時