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『それで?アルコールの臭いはどうしたんだい?』
元よりフョードルが誰かとお酒を飲んでいたとは思えないレフは綺麗に整えられ、フカフカのベッドに座る友の髪を梳くう。
主に臭うのは髪である。
「ワインを叩きつけられました。タオルで拭かれましたが矢張り臭いますか」
『何かあったのかい?君は…女性関係で拗らせる事は無いと思っていたが』
「違いますよ」
ならば何があったのだというのか。
然し、レフはこれ以上踏み込もうとはしなかった。
『まあ、良いさ!君が態々来てくれたのだからね、僕の持てる全てをもって接待を…と、言いたい所だが先ずはお風呂に入ろう』
話を聞く限り布で拭いただけなんて不衛生である。
上着を預かり、さぁさぁと背を押した。
「泊まるので服は洗って明日には着れるようにしてください」
『…泊まる?』
「今外に出るのは避けたいので」
肩を竦め意味あり気に此方を見た。
さあ、どう出る?と言わんばかりのフョードルにレフはふむ、と考え込んだ。
『悪い事をしたんだね、フョードル…僕でなければ警察に突き出していたさ』
咎めるような、でも決して突き放す事はしない物言いに、
シャツの釦を解いていたフョードルの手が止まる。
ゆるりと何も映し出さない暗い瞳がレフを移した。
「何も聞かないんですね、貴方は」
何時も、どんな時でもレフはフョードルの異常さに深く突っ込む事はなかった。
何かあるだろうと分かる筈なのに、この男は何時も変わらず困った様な微笑みでフョードルを受け入れようとするのだ。
それが、酷く不快でならない。
ガリ、とフョードルが爪を咬む。
『…友だからさ』
「僕はそんな風に見た事はありません」
屹度、これからも目の前の奇妙な男を友と呼ぶことはないだろう。
『知ってるとも、そんな事。
…さあ!服を差し出したまえ!明日の朝には新品同様に仕立てて見せよう!』
手をパンッと叩き、レフは快活に笑った。
「人に脱衣姿を見せる趣味はありません」
『そんな殺生な!』
ヒョイッと脱衣場から放り出され情けない声を出した。
『全く…僕の部屋なのだけれどなぁ』
レフは困った様に眉を下げ微笑む。
ーーー「何も聞かないんですね、貴方は」ーーー
『何も聞かない…かぁ』
ーーーでもさ、屹度これ以上踏み込めば君はもう会っては呉れないだろう?
そう出かけた言葉をレフはソッと心の中に仕舞った。
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なはて(プロフ) - ものすごい面白かったです!作者様の気が向いたらでも良いので、続きを書いてくれたら嬉しいです! (2022年4月25日 7時) (レス) @page22 id: 72c776ebcc (このIDを非表示/違反報告)
天人鳥(プロフ) - すんごい続きが気になります…。更新お願いします! (2022年3月28日 19時) (レス) id: d581acac34 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - この作品完結してしまったのでしょうか…?続きが気になります! (2021年5月1日 12時) (レス) id: 5986ae6a0e (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - わたくしさん» それなです〜ほんと色とかもつけて欲しいです。絶対上手い (2021年3月27日 23時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
わたくし - 絶対デジタルで絵描いたら上手いですよ! (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6ee51eba6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年7月16日 23時