友を想ふ ページ19
『僕が乗っても良かったのかい?恥ずかしながら正直、役に立てる気がしない』
トラックに乗りながらレフは困惑気味に口を開いた。
現在、探偵社員の谷崎という青年の異能によってポートマフィアから目を遠ざけ車で逃亡している状況で戦闘も儘ならぬレフを車に乗せているのは彼にとって疑問でしかなかった。
「勝手に1人で抜け出してみなよ。君一人じゃあ、ポートマフィアに捕まって拷問されて終わりさ」
『ごう……、物騒だね本当に』
なんだか感覚が麻痺しそうだよ、とレフはここ最近何度目かの頭痛に悩まされる事になった。
車を停めたのは擂鉢街から少し離れた場所だ。
共食いと呼ばれる異能力者、プシュキンの隠家が此処にあるという。
こんな場所もあったのか、とレフは貧困街のような街を眺めた。
確保の為向かう人員は2人。
眼鏡をかけた男と先程の白髪の青年だ。
青年の方はヒョロりとして腰も細い。
異能力者なのだろうけれど、レフは小さくなっていく背を少し心配そうに眺めた。
「安心しな、敦は強いよ」
それを見兼ねたのか女性…与謝野がレフに微笑んだ。
『敦くん、か。まだ若いのに…こんな』
「フョードルは敦より若い頃から恐らく殺しをしてるぞ」
『……君、容赦ないね』
すぐ隣で書類とにらめっこをしていた乱歩の言葉にレフの口から苦笑が零れる。
「友達、なンだって?…妾にはフョードルがどんな人間か分かんないけど、正直どんな奴なンだい?」
『どんな奴…』
フッ、と直ぐに思い浮かぶのは根暗の一言だ。
『陰気で、人一倍神経質で、友達が僕以外居なさそうで、直ぐ不機嫌になるし、普段は何を考えているか分からない』
「なンだいそりゃ」
『でも、何時も分からない訳じゃないんだ。食事をしている時美味しいものを食べると口が少し緩むし、神経質だけど意外と僕の好きな様に髪を弄っても怒らない。
話をすればちゃんと返事を呉れる。まあ、気が乗った時くらいだけど』
何より…、レフは言葉を途切れさせた。
ウシャンカを僕に渡し、去っていくフョードルの姿が妙に忘れられない。
『何より、放っておけないんだ。独りにすると何処かふらっと居なくなってしまうようで…まあ、実際目の前で居なくなってしまったんだけどね』
どこか自傷気味に、レフは微笑んだ。
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なはて(プロフ) - ものすごい面白かったです!作者様の気が向いたらでも良いので、続きを書いてくれたら嬉しいです! (2022年4月25日 7時) (レス) @page22 id: 72c776ebcc (このIDを非表示/違反報告)
天人鳥(プロフ) - すんごい続きが気になります…。更新お願いします! (2022年3月28日 19時) (レス) id: d581acac34 (このIDを非表示/違反報告)
塩じゃけ(プロフ) - この作品完結してしまったのでしょうか…?続きが気になります! (2021年5月1日 12時) (レス) id: 5986ae6a0e (このIDを非表示/違反報告)
二酸化酸素(プロフ) - わたくしさん» それなです〜ほんと色とかもつけて欲しいです。絶対上手い (2021年3月27日 23時) (レス) id: f6be19e74d (このIDを非表示/違反報告)
わたくし - 絶対デジタルで絵描いたら上手いですよ! (2021年2月7日 1時) (レス) id: 6ee51eba6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年7月16日 23時