◇ ページ3
◇
───「終わる」なら。
「終わらせる」のならば。
最初から、最後まで。
隠し通そう。
───大丈夫。昔から、「嘘」をつくのは得意だから。
◇
「──……い…」
───誰だろう。
不意に誰かの声が聞こえて、慌てて顔を上げる。
少し額が痛い。どうやら資料をまとめている間に机に突っ伏したまま眠ってしまったようだ。
「──あ、やっと起きた〜」
すぐ後ろから聞こえてくる高くて可愛らしい声に振り向く。
「……半兵衛…様」
「おはよう、Aちゃん。……随分うなされていたけど…大丈夫?」
「…私が…うなされて……?」
悪い夢でも見ていたのだろうか?だが、全く思い出せない。
一体、私は何を見たのだろうか────
「Aちゃん?どうしたの、ぼーっとして」
名を呼ばれ、ハッと我にかえる。
「……いえ、なんでもありません。…ところで、何か御用ですか?」
「うーん、とね、御用ってほどのことでもないんだけど……美味しいお菓子を知り合いから貰ったから、Aちゃんと一緒に食べたいなーって」
「……私と、ですか?」
半兵衛の意外な申し出に少々驚きながらも表情は崩さない。
「うん。Aちゃん、最近、ちょっと頑張りすぎてるから息抜きにどうかなって」
今から、どう?と半兵衛は可愛らしい笑顔を向ける。ほんとうなら、今すぐにでもはい、と答えて甘味を食べたいところだが……。
半兵衛の眩しい笑顔が映る視界の隅には思わず顔をしかめたくなるほどの書類と資料の山があった。
甘味を食べる時間か、断ってまた黙々と作業を続けるか、一人
「──ぷっ、あはは!!」
急に半兵衛が笑い始めた。
何がなんだかさっぱりで戸惑っていると、ごめん、ごめんと笑いながら半兵衛は謝った。
「ふふっ、いつも仕事第一なのに、甘味には弱いのはやっぱり変わらないなぁ…って」
「…別に、私、仕事が好きでいつもやってるわけじゃないですから」
そんな言い訳じみたことをぶつぶつ言いながら、何となく恥ずかしくなって、少し目を逸らした。
すると、半兵衛は急に真面目な表情になり、Aの頭に手を優しく撫で始めた。
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ナツ(プロフ) - ユイさん» ありがとうございますm(_ _)m更新は遅いと思いますがこれからもこの作品をよろしくお願いします(*^^*) (2019年12月26日 22時) (レス) id: 60904ac1ec (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 題名?で気になって見てみました!そしたら、続きが気になりました!更新頑張って下さい! (2019年12月11日 20時) (レス) id: dcd6ff7333 (このIDを非表示/違反報告)
S.H(陽香) - あるとさん» ただ,作者さんに分かってもらいたいのが…決して私は,悪口コメントをしたかったんじゃないんですよ。私も色々あったので,いまだに精神科の病院に行き来してます。そこの所,ご理解いただきたいですm(_ _)m (2019年7月14日 20時) (レス) id: 7be101f077 (このIDを非表示/違反報告)
S.H(陽香) - 今もメンタルケア続けているので,まだなごりが残ってたまに敬語外してしまうかも知れませんけど…なるべく敬語で頑張ります(笑) (2019年7月14日 20時) (レス) id: 7be101f077 (このIDを非表示/違反報告)
S.H(陽香) - あるとさん» それと,わざわざ注意ありがとうございます。ですよね,敬語は大事,ですよね。すみません,私も色々あって,精神科の病院に行き来したりして自分のメンタルケアしていたんで,ちょっと人格的なものが変わって敬語外してしまったのかも… (2019年7月14日 20時) (レス) id: 7be101f077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナツ x他1人 | 作成日時:2019年2月2日 13時