お金の匂い

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タンスの中でしわくちゃになっていたスーツを着て、久しぶりにアパートから出た。






外は曇っていて、雷がゴロゴロ鳴っている。






傘持ってくりゃ良かったな。なんて、目的地に着く直前で思ったりして。






…ちなみに、目的地は結構山奥。







虫に注意しながら行く手を阻む木の枝たちを片手で追い払う。






…しばらく歩くと、工場が見えてきた。






走って森から抜け出し、コンクリートの道路へ足を着けた。





｢うっわ…｣






奇妙な所だな…排気ガスの香りがする。





完全に吸っちゃいけない匂いだ。と、ポケットからクシャクシャに丸まったハンカチを取りだし口を塞いだ。





…古びた階段を上り進み、やっとドアまで辿り着いた。





コンコンッ






ドアを軽くノックする。






…誰も居ないのか、返事がない。






｢す…すみませーん、誰か居ませんかー？｣






…やっぱり返事がない。





今日は帰るか、と引き返そうと階段を下りた。






…その時だった。






｢何か用か｣





｢わっ！｣





後ろから声をかけられ、全身に力が入った。






…振り向くと、そこに居たのは黒いフード被った不気味なじいさん。






｢あ、あの…これ…｣






震える手でチラシを見せると、じいさんは微かに微笑み手招きをし、俺を部屋の中へと招いた。






｢…金が、欲しいのか｣






俺の顔を見ずに吐き捨てるように言ったじいさんは、金色に光る奇妙な招き猫の頭を撫でた。






｢…はい｣






…金。





そうだ、俺は金が欲しい。






だからここに来たんだ。





じいさんは煙草に火を付け、白い煙を口から吐いた。





｢…約束を守れば守るほど、お前は金持ちになれる｣





｢…約束？｣





｢そうだ…まず一つ目｣






俺はゴクリと唾を飲み、耳を済ました。






｢…金を捨てるな｣





…捨てる？





んなことするわけない。ってか、捨てるやつなんかいないだろ。






｢…二つ目…金を愛しく思うな｣






｢…はい｣





｢最後に、三つ目…









…お前は、金の匂いを見ることになる｣






｢……は？｣





じいさんは立ち上がり、キラリと輝く針らしきものを




























































































─俺の腕に刺した。

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