永遠色グラフィティ

こっちおいで(4) ページ9

「なに…？」

ベッドに入る前に、持って来た袋をごそごそ探る。



「まっすーんち用の部屋着を持って来たんだけど、置かせてくれる？」

スウェットを手に振り返ると


「う…ん、もちろん…」

ひと言ひと言、苦しそうに息を吐きながら話すもんだから、

迷惑なのかそうでないのかわからない。


「迷惑だったら…」

言いかけると、

びっくりした顔で頭を振る。


「置いといて…。

シゲのものなら、いくらでも…」

少し照れたように言った。


「そんなこと言われたら、俺調子に乗るよ？

あんなものやこんなものまで持って来て

まっすーんち占領しちゃうかも」


ペラペラ早口で言うと、

まっすーは嬉しそうに

うん、うん、といちいち小さく相槌を打つ。


ああ…いつものまっすーも可愛いけど、

今日のまっすーは一段と…。


ってやばい。寝かせないと。

可愛いまっすーを独り占めしておきたいのは山々だけど、

もうすぐ四人の活動も始まるし、こうもしていられない。


「じゃあ寝よっか」

着替えてまっすーの横に潜り込む。


「まっすーの熱でちょーぬくぬくやなぁ」

思わず関西弁で言うと、まっすーは顔をボッと赤く染めた。


ん？俺なんか…まずいこと言った？


…。

布団に入ったは良いけれど、

どういう体勢が良いのか計りかね、

仰向けにただ寝そべる二人。


と言うかまっすーはこっち向いてるんだけど、

俺が固まってる…。



「抱きしめても…良い？」

この状態も辛いのでまっすーに視線を落とすと、


「へ…？」

ぼやっとした瞳を潤ませている。

え、熱上がったか？


「顔真っ赤だよ。

やっぱり病院言った方が…」


慌てて起きかけると、


「良いから…だいじょぶ…。

ね…抱きしめて…」


少しずつ体を近づけてくる。


「うん…」


本当に大丈夫なのだろうか。

目の前のまっすーがとても小さく見えて、

消えてしまいそうで不安になる。


安心させなくちゃって、思っていたのに。


いや、大丈夫。

まっすーのことだから

本当にまずい状況になったらこんなこと言ってこないはず。


俺は密かに深呼吸すると、

手を広げてまっすーをくるんだ。


「まっすーって

こんなにあったかかったんだ」


自分が抱きしめているはずなのに、

なんでかまっすーに包まれているような気分になっていた。


「シゲも…あったかい…」


「俺はまっすーへの愛情でいつでも熱々よ？」


「煮えてる？」


「うんって言うより、揚がってる…」



(つづく)

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