永遠色グラフィティ

コヤ離れ(1) ページ40

親離れとか子離れとか言うけど、

俺は今、コヤ離れしようと絶賛奮闘中。


事務所に入ってから四六時中ベッタリだった小山から、

少しずつでも離れないとなって思ってる。


ずっと一緒にい過ぎたせいか、

モロモロの寂しさを埋めたかっただけなのか、

一時期そういう関係だった俺たち。


だけどもう、そんなことやめにしなくちゃ。


だって、もうすぐ小山は結婚する。


あいつは何も言わないけど、

見ちゃったんだ。

あいつが指輪買ってるとこ。


少しの寂しさはあるけど大丈夫。

俺と小山は家族みたいなもんなんだから。


結婚だって、心から祝福できる。

そう思っていた。


ーーーーーーー


休日に手越とバッタリ会って、二人で街を歩いてた時。

ジュエリーショップから出て来た小山さんを発見した。


「何やってんの慶ちゃん！」

そっとしとこうぜって言ってる俺を無視して小山にかけよる手越さん。

空気読めよ・・。


「えっ、手越？！とシゲ！

なっ、何してんの二人で！！」


「こっちが先に質問したんだろ」

「あ、ちょっとね・・買い物・・」

そう言うと手に持っていた小さな袋を後ろに隠した。


「隠すの遅くない？もう見ちゃったよ！」

手越がケラケラ笑いながら言うと、


「もう〜バカにすんなよな〜！」

顔を赤くするから、なんだか小山が不憫に思えた。

いつもなら一緒にバカにすんのに、俺、変だな。


「会わなかったことにしてやるよ」

ボソっと零した一言に、驚いた顔をする二人。


「えっ、なんで？」

不思議そうな顔の手越。


「だって・・知られたくなかったんだろ？

じゃあな小山。行こう手越」

なんでか小山と目を合わせられないまま、俺は後ろを向く。



「俺牛タン食いてーな」

小山に手を振ってついて来た手越に

わざと大声で言う。


「慶ちゃんも誘う？」

「いいよ、あいつは忙しいんだろ」

訝しげな手越の肩に腕を回し、楽しげに笑ったような、フリをした。


見てるよな小山。

俺はもう平気。

一人でもやってけるから。


幸せになれよ。



ーーーーーーー



その夜。

何故か俺は熱を出した。


「うーーー・・・」

ここ数年熱なんか出してなかったのに。



”今家にいる？”

枕元で震えた携帯が、小山からのメッセージを届ける。


”いる”

ぼうっとした頭では、ひと言返すのが精一杯。


”行っても良い？”


”だめ”


こんな状態で小山に会ったら

何するかわかんないよ、俺。




(つづく)

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