永遠色グラフィティ

できるかな(5) ページ21

教えられたのは

慶ちゃん家のすぐ近くの総合病院。


どういうこと？

家を出てすぐに倒れたの？


とにかく早く行かなくちゃと走っていると、

エレベーターの前でまっすーと一緒になる。


「まっすー」


「手越、どういうこと？」


「俺もわかんない」


不安で胸が張り裂けそうになる。


なんでもないよね。

ちょっとした体調不良だよね。


「大丈夫」

横でまっすーが言った。


「だって小山だよ？大丈夫だよ」

にっと笑って、頭をポンポンと叩かれる。


「うん、そうだよね」

俺は目を拭ってエレベーターに乗り込んだ。



教えられた部屋に付くと

マネージャーとシゲが廊下で

ぼーっとしていた。



「小山は？」

怖くて何も言えない俺の代わりに

まっすーが聞いてくれる。



「今、手当してる」


「手当、って？」


「あいつ、病気なんだよ」


シゲが俺を見て、唇を噛んだ。



「治るんでしょ？」


マネージャーが頭を抱えて言う。


「今すぐどうこうって病気ではない。

だけど確実に病状は進むし、長くは、生きられない」


「そんな・・」


みんなの会話を遠くに聞きながら、俺は病室のドアを開けていた。



「慶ちゃん」


沢山の管につながれた慶ちゃんが

かすかにこっちを向いた。


「手越・・」


苦しそうに眉をしかめて。

けれど俺を見て、笑った。


「なんで、言ってくれなかったの」


だからあんなことをしたのか。


パラレルワールドでも、

悪いものを食べたんでもなかったのか。



「手越をひとりぼっちにするんだよ、俺。

そんな奴、そばにいない方がいいんだ」


「誰が決めたの、そんなこと」


「俺だよ。俺がいたくない。

好きな人の悲しむ顔、見たくない」


「もう充分悲しい顔したよ。

昨日も今日も、慶ちゃんが冷たくて、

俺・・」


「・・だよね。それはごめん。

ああいう風にしたら手越は俺を嫌いになるかもって、

期待してたんだけどな」


「なるわけない」


「なれよ」


「無理」


「俺はもう降りたから。

手越とはもう付き合えない」


「気持ち悪いから？」


「嘘だよ、あんなの」


そんな悲しい目で見ないで。

わかってる。

そんなこと思ってないって、わかってる。



「慶ちゃんに選ぶ権利ないから」

俺だって、離れる気はない。


「なんでだよ〜」

そしたらやっと、いつもの笑顔。


慶ちゃんは俺にいじめられて

嬉しそうに文句言ってなくちゃ。


たまになら、

あの慶ちゃんも良いけどね。




fin.

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