永遠色グラフィティ

熱愛(3) ページ3

「まっすーに電話、」


慌てて携帯を手にする手越。




上着を羽織り、手越にもパーカーを渡すと


携帯を耳にあてる手越を促して部屋を出る。




「もしもし、まっすー？」


助手席に座った手越が


身を乗り出した。




「あのさ、まっすーさ・・」


駐車場から車を出し、小山の家に向かう。




「慶ちゃん以外に、付き合ってる人いるの？」



言い出しにくそうにしていた手越が


腹を決めたように口にする。




ーーーーーーー



「は？何言ってんの？

いる訳ないじゃん」



向こうから聞こえる声は


いつもと少しも違わない。




「だよねー。

そんな訳ないよね」



うんうんと頷くと、


運転席から携帯を奪われた。




「小山が記者から


まっすーの”熱愛写真”てやつを


見せられたらしいんだよ。


お前、なんか心当たり、」



ブツッ。



そこで思いがけず通信が遮断され、


俺は言葉を失った。





・・・・・。



路肩に停めた車を動かそうと


ギアに手をかけると、



「シゲ、何かの間違いだよ。絶対。」



手越が俺の手に、自分の手を


そっと重ねた。




そうだよな。



俺は頷いて、車を発進させた。







小山のマンションに着くと、


小山の車はいつもの場所になくて。



どこ行ったんだ、あいつ。




「シゲ、携帯鳴ってる！」


ディスプレイには”小山”の文字。




「もしもし？」



「もしもし、シゲ、心配しないで。


ちょっと頭冷やしたら帰るから」



さっきとは違って落ち着いた声。




「そっか、今お前んち来たんだけど、

じゃあ俺ら帰・・」



「まっすー・・」



話し終わる前に


向こう側で小さく聞こえた小山の声。



「あれ、まっすーいるの？」




問いかけてももう、


小山は俺に話しかけはしない。




「小山、俺・・・」



俺との電話を切ったまっすーが


小山のところに行ったとわかり


ほっとしたのもつかの間。





「ごめん、小山・・・」



「え？」



「俺、もう小山とは付き合えない」



「じゃあ・・と・・付き合うの？」





聞き取れなかった名前は多分、


増田と仲の良い親友、だと思っていた人。



以前ドラマでも共演していて、


プライベートでもよく一緒に遊んでいる人。




「うん・・、ごめん」



増田の悲しそうな声に、


なんでだよ、なんで・・


小山の呟く声が、遠くに聞こえた。





(つづく)

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